健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

Q&A

お散歩中の無駄吠え!!

こんにちは。1歳6ヶ月のビーグルを飼ってます。毎日2回お散歩をしているのですが、困ったことがあります。他のワンちゃんに会うとうちの子は、狂ったように吠えかかります!!仲良しのワンちゃん1匹にだけは吠えないのですが、その子以外のワンちゃんには決まって吠えるのです。家では全く吠えない子なのですが・・・・。
「駄目!!」というとたいていのことは、やめてくれるのですが、こればかりはどうしても治らないのです。笑って見過ごしてくれる飼い主さんも多いのですが、迷惑をおかけしていると思うと心が痛みます・・・。他のワンちゃんは良い子にお散歩しているのになぁ。何か良い方法お持ちの方、どなたかアドバイス宜しくお願いします。

 散歩中に愛犬が、他の犬に吠えてしまう。これは、周囲の方が優しく許してくれても、なかなか飼い主の方にとっては辛いものですね。

 愛犬は何時頃から他の犬に吠えるようになったのでしょう?そのきっかけは何かなかったでしょうか?1匹だけ吠えない犬がいるとのこと、その犬と他の犬との違いは何かありませんか?何故、愛犬が吠える犬と吠えない犬がいるのか、その違いを探して見てみください。
 愛犬の様子の違い、また、飼い主の方ご自身の他の犬や飼い主の方たちに対する態度の違いは何かありませんか?

 犬が他の犬に対し、吠えるのは幾つかの理由がありますが、多くは次の2つのどちらかでしょう。

 1.他の犬に対し、恐怖心を感じるため
 2.自分のテリトリー、仲間を守ろうとするため


 この他に、犬とのコミュニケーション手段がわからずに、興奮して吠えてしまうという場合もありますが、ご質問の愛犬は1匹だけですが、仲良くしている犬がいるとのことなので、その可能性は低いでしょう。

■他の犬に対し恐怖心を感じている場合
 このような犬は、吠えていても少し尻込みをし、他の犬が一歩前にでると、少し体を引くような様子がみられます。また、吠え声は高めの音となります。

 恐怖心をなくさせるためには、まず飼い主が愛犬にとって良きリーダーとなる必要があります。リーダーがしっかりしていれば、犬はそれによって安心感を持ち、不安や恐怖心が減じるかもしれません。良いリーダーとなるには、犬の衣食住を確保してあげるだけでなく、犬にしっかりと指示を出し、それに従わせる力がないといけません。基本的なトレーニングを更に強化していくことで、犬に飼い主の指示にはすぐに従わなければいけないと、日々認識させてあげると良いでしょう。

例えば、お座りや、フセ、マテなどを毎日、短時間でも行わせていき、それに従ったときにはたくさん褒めてあげたり、ご褒美をあげたりするようにします。
*指示に従うのが、いつの間にか当たり前となり、ついついそれを褒めてあげることを忘れがちですが、初心に返って愛犬ともども頑張ってください。

 恐怖心をなくさせるには、上記の方法の他に『原因を取り除く』、『徐々に原因に慣らさせる』、『原因=良いことに考え方を方向転換させる』などの方法があります。また、『吠えられない状態にしておく(ただし、犬にとって嬉しいことで)』という方法もあります。

 『原因を取り除く』にはお散歩中に他の犬と会わない、ということになりますが、これは難しいことですね。それが難しい場合には別の方法を試していくと良いでしょう。
 『徐々に原因に慣らさせる』、『原因=良いことに考え方を方向転換させる』、
『吠えられない状態にしておく』というのは、一つ一つではなく、全てを組合わせて行っていくことができます。

 例えば、『吠えられない状態』にしておいて、『徐々に原因に慣らさせつつ』、『原因を良いことと考えさせる』というようにしてみます。

 この方法は、何人かのお散歩仲間の方で、犬が社交的で、比較的大人しい犬を飼っていらっしゃる方にご協力をお願いする必要があります。

 まず、愛犬を吠えられない、もしくは吠えにくい状態にします。フセやオスワリをさせ、マテの指示をだしておきます。そこに、お散歩仲間の方に近づいてきてもらい、愛犬が吠え始める距離の手前で留まってもらいます。この時に、飼い主の方はおやつなどをあげるようにします。

 また、お散歩仲間の方からおやつを愛犬にあげてもらったり、撫でてもらったりするのも良いでしょう。これを何度か続けていくうちに愛犬の中で、「お散歩中の他の人とその愛犬」が来るとおやつがもらえることから、「お散歩中の他の人と愛犬」=「良いこと」と考えられるようになってくるかもしれません。これを何人かの人に繰り返してもらいながら、日をおって、徐々に他の犬との距離を縮めていくと良いでしょう。
 
 愛犬が吠え始めた時に何度も声をかけ、叱ったりすると、その声で返って応援されている、と感じてしまうかもしれません。低い声で、一度だけ『ダメ!』と叱るだけにしましょう。それでも吠える場合にはご褒美を一切与えず、それ以降無視し、散歩を切り上げて帰ってしまうというのも一つの方法かもしれません。

■自分のテリトリー、仲間を守ろうとしている場合
 この場合も、「他の犬に対し恐怖を感じている場合」と同じように、まず飼い主の方が良きリーダーとなることが大切です。仲間を守るために吠えるというのは、守ろうとする仲間を下位の相手として認識している可能性があります。このような可能性を無くすためにも、基本のトレーニングを日々行っていきましょう。

 また、上記の『吠えられない状態』にしておいて、『徐々に原因に慣らさせつつ』、『原因を良いことと考えさせる』ということも効果がある場合があります。ただ、この時には、見知っている公園や散歩道ではなく、愛犬が慣れないところ、テリトリー意識を持ちにくいところで、行っていくと良いでしょう。お散歩の時間を増やしたり、お散歩の範囲を広げていくことでテリトリーに対する意識が薄まっていくこ
ともあります。

 雄の場合には、性ホルモンが関連し、それによって攻撃的になったり、テリトリー意識が高まったりすることもあります。このため、去勢を行うという方法もあります。

 根気良く試してみても、なかなか状態が変わらない、また愛犬がどちらのタイプかわからない、というようなときには行動治療専門の獣医師にご相談されると良いでしょう。