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Q&A

フィラリアにかかって・・・

 おととし現在8歳になる愛犬がフィラリアにかかってしまいました。咳をしているところを見ていると、とてもかわいそうです。くすりもあげています。
でも少しでも快適に暮らさせてあげたいので、フィラリアにかかっていたけどこうしたらよくなった!こうしたら少しでも、楽になった!などの経験がありましたら教えてください。

 フィラリアは別名『犬糸状虫』と呼ばれる寄生虫で、虫体はそうめんの様に細長
く、長さは12cmから30cm余りです。蚊がフィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)を媒介するため、蚊に刺されることでフィラリアに感染します。フィラリアの成虫は犬の右心(主に肺動脈)に寄生するため、フィラリアに寄生されると、フィラリアの体によって、右心の血液の流れが邪魔されてしまい、右心にかかる負担が大きくなってしまいます。

 また、フィラリアの虫体が心臓や肺動脈の内側の壁を傷つけるため、炎症やカサブタのようなものが生じ、またフィラリアの分泌物や排泄物、フィラリアの幼虫であるミクロフィラリアが原因となって体の各所に炎症が起こったりします。それによって肺の血管が狭くなったり、血栓が詰まったりしてしまうことや大切な臓器である肝臓や腎臓にも炎症が起こってくることがあります。このため、症状が重くなってくると全身の浮腫や腹水などの右心不全症状や肺動脈高血圧症などが見られることがあります。

 フィラリアに感染した場合の治療方法はいくつかあります。
成虫を殺すお薬を投与する方法がありますが、これは犬の体自体にも負担が大きいため、体力が十分にあるような場合に適しています。
また、成虫を手術によって摘出する方法もありますが、これは首にある太い血管から特殊な鉗子を心臓の方向へ入れ、虫体を取り出すものです。これには麻酔のリスクや手術の負担があり、成功率は50%程度と言われています。
成虫を殺さずに、ミクロフィラリアだけを殺し、成虫の寿命(4~6年)が尽きるのを待つという方法もあります。この方法ではミクロフィラリアによる病害はなくなり、また同時に新たにフィラリアに感染することを防止することができますが、成虫による病害は残りますので、心臓に負担がかかり続けます。このため、心臓の負担を減らし、フィラリアによる病害を少なくするための投薬が必要となってきます。

 この他に、犬が高齢で体力がない場合や、すでに咳や腹水がでているというように症状がひどい場合には、心臓の負担を軽くし、肺に酸素が多く入るようなお薬や炎症を抑えるようなお薬を投与して、症状を和らげてあげるという対症療法のみを行う場合があります。

 ご質問のワンちゃんは投薬をされておられるとのこと、この場合もっとも大切なことはお薬の飲み忘れがないようにすることです。お薬によってワンちゃんの体は症状をできるだけ、抑えていっていることを忘れないようにしましょう。

 フィラリアによって心臓に負担がかかってきているので、心臓の負担をできるだけ少なくするために、過度な運動は避けるようにし、できるだけ興奮させないようにしてあげることも大切です。また、気温の変動は血管を収縮させ、心臓に返ってくる血液量を増やしたり血圧を上げたりもします。このため、気温の変動がなるべく少ない環境で飼育してあげることも大切です。

 咳がでているような時には呼吸も苦しくなってくるので、体勢などもワンちゃんが楽な状態を維持してあげるように、クッションなどを利用してみるのもお勧めです。それでも、咳がひどい、また舌の色がいつもの色よりも青みを帯びていると言うような場合には呼吸困難を起こしている可能性が高いので、この場合はすぐに動物病院へ連れて行ってあげましょう。

 また、普段から食欲や元気があるかどうか、咳の回数や状態、尿の色などもチェックし、異常がある場合にはすぐにかかりつけの動物病院に相談するようにしておくと良いでしょう。