健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

Q&A

歯石を取り除くには

12歳くらいのポメラニアンの歯石がひどくて困っています。病院で取ってもらうには麻酔をするそうですが、死亡(事故)率が高いそうで、心配です。よく、歯石を取ってもらうための麻酔で死んでしまったということを耳にします。
歯石がとれたときいて、牛皮ガムをあげてみましたが、歯がかなり弱っていてだいぶ抜けてしまっているので噛めないようでした。どうしたらよいでしょう。麻酔せず歯石をとることができれば一番良いのですが・・・。目の下に膿がでているっぽいので、はやく何とかしてあげたいのですが・・・。よろしくお願いします。

 12歳とご高齢の愛犬、歯石がつき、かつ歯周病がひどく、歯根部に膿がたまって眼下膿瘍を併発しておられるのですね。
 まず、全身麻酔なしではきちんとした歯石除去は難しいものとなるでしょう。
 犬や猫では、成人の人間と異なり口をあけてじっとしているということが中々できないものです。
目立った歯石の除去だけですと、大人しい犬に関しては全身麻酔を行わずともできることがありますが、歯石をすべてしっかり除去し、歯石除去後の歯表面の研磨(術後に歯石を付きにくくするためです)を行い、かつ歯周疾患の程度をしっかり診ていく、となりますと全身麻酔が必要とならざるを得ないでしょう。

しかし、全身麻酔がどうしても、というのであれば目立った歯石をなんとか無麻酔で除去していくか、あるいは抗生物質・抗炎症薬の投与を行い、日々の歯の手入れを行っていくことで眼下膿瘍に対しては対処していくことが可能かもしれません。
ただ、この場合、抗生剤等の投与を中止すると、再発を繰り返す恐れがあり、膿瘍の原因菌が抗生剤の長期投与で後日耐性を持ってしまったりする可能性もあります。
主治医の先生となるべくお早めによくご相談し、愛犬の健康状態を把握するために検査をお受けになり、今後の治療方針をお決めになられると良いでしょう。

~全身麻酔について~
 全身麻酔は全身の臓器の機能、痛みや手術に悪影響を及ぼすような反射機能を薬剤により一時的に抑制し、痛みがなく、安全に手術ができるようにするためのものです。
全身麻酔をかけることができなければ、行うことができない治療は多々あります。このため、『全身麻酔=体にとって悪いもの』ではありません。
ただ、麻酔により各種臓器の機能が抑制されることは事実であり、この抑制が著しい場合、極端なことをいえば、心臓停止、呼吸停止などが生じてしまうことがあります。このような状況が起きないように、全身麻酔をかける際、獣医師は事前に動物の体の状態を把握するために各種検査を行い、かつ麻酔中はもとより、麻酔前後もしっかりと動物の状態をモニターし、体の状態に応じた対処をしていっています。
また、現在では、一昔、二昔前の状況と異なり麻酔薬は全身に及ぼす負担が少ないもの、麻酔薬の排泄がスムーズなものが次々と開発され、かつ麻酔管理の機器や麻酔による体の変調を復するような薬剤も進歩してきており、麻酔が原因となる死亡は少ないものとなっています。

 麻酔をかけるかどうか、についてはまず愛犬の全身的な健康状態を把握するために検査をしっかりと行い、愛犬の麻酔リスクはどの程度であるか、麻酔をかけることは可能であるか、麻酔をかけての治療のメリット・デメリット、麻酔をかけないでの治療のメリット・デメリットなどをよくかかりつけの動物病院の獣医師とお話し合いになられることが何よりと思われます。物言えぬ愛犬・愛猫のためにしっかりと獣医師に質問をし、納得のできる治療をお受けになるようにしましょう。