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Q&A

副腎皮質機能亢進症っていう病気について、知っている方がいたら教えてください。

家のプードルが今その病気で苦しんでいます。5キロ近くあった体重は3.5キロまで減って、食欲も全然なく、病院での検査と薬ずけの毎日です。一日に飲む水の量は1リットル近く、おしっこも何度も・・・
息も荒く、元気もなく、ほとんど遊びません。どうすれば、よいでしょうか?

まず、副腎皮質機能亢進症という病気についてお話しましょう。
副腎は腎臓の上部にある小さな臓器です。内部は皮質と髄質に分かれていて、副腎皮質からは、身体の電解質を調整したり、糖質代謝を助けるなどのホルモンが分泌される、とても重要な働きをしています。この臓器の機能が異常に高まり分泌されるホルモンが過剰になった状態を「副腎皮質機能亢進症」といい、犬、特に高齢犬に多くみられます。

症状としては、初めのうちは多飲・多尿(水をよく飲む、排尿の量、回数も多い)、異常にたくさん食べるようになる(多食)、などがあげられます進行すると、肥満が目立つようになり、また筋肉が弱くなったり、皮膚が薄くなったりして、お腹が太鼓のようにふくれてきます。皮膚が薄くなる、弾力性がなくなる、また、痒みを伴うことなく脱毛がみられるようになります。また、皮膚に色素が沈着し皮膚の色もかわってきます。糖尿病を併発することもあります。原因としては、脳下垂体の異常、副腎皮質の異常、副腎皮質ホルモン剤の過剰投与など大きく3つに分類されます。

■脳下垂体の異常
脳下垂体の異常により副腎皮質刺激ホルモンが過度に放出され、そのため、過剰な副腎皮質ホルモンの分泌がおこります。副腎皮質機能亢進症の原因の80%がこれにあたります。

■副腎皮質の異常
副腎自体の腫瘍が原因で、副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されてしまうものです。

■副腎皮質ホルモン剤の過剰投与
副腎皮質ホルモンの過剰投与あるいは長期投与が原因となるものです。
医原性副腎皮質機能亢進症とよんでいます。

治療は、原因によって、内科療法、あるいは外科療法のいずれかが選択されます。
脳下垂体の異常が原因ならば、脳内のドーパミン濃度を上昇させる薬剤や、副腎の細胞を破壊する薬剤、副腎でのホルモン合成を阻害する薬剤を投与する内科療法が用いられます。

副腎腫瘍が原因の場合、外科手術で切除することが第一の選択となります。医原性の場合には、ステロイドの投与を中止します。しかし、急に中止すると危険が伴うため、普通は徐々に投与量を少なくしていきます。

「病院での検査と薬ずけの毎日です」とのことですが、副腎からのホルモンの分泌が過剰なため、副腎の細胞を破壊する薬剤もしくはホルモン合成の阻害薬を継続して投与されているのではないかと思います。この病気の治療は、生涯にわたって、過剰になった副腎皮質ホルモン分泌を薬剤を用いてコントロールすることで、健常犬と同等の生活の質を保ってあげることが目標となります。

中にはコントロールが非常に困難な症例もあり、経過は必ずしもみな同じというわけではありませんが、当初の薬剤導入期を過ぎて状態が安定すれば、そんなに大量の薬剤や検査を要するものではないと思います。

また、心不全や腎不全を合併することで急激に状態が悪くなる場合もありますので、注意が必要でしょう。