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Q&A

猫の爪除去について

こんにちは、猫の爪除去について詳しくないのですがいろいろな意見をきかせてください。実際に爪除去の手術をされている方はいますか?
内の猫は爪除去をしようとは考えていませんが日本でも爪除去の手術が出来る、アメリカではしているとかそういう話を聞いて、どうなのかと考えさせられました。

 猫の爪の除去はアメリカでも日本でも行われています。手術を受けるかどうか、あるいは他の人が愛猫に爪の除去手術を受けさせることを容認するかどうかは、人それぞれのお考えでしょうが、愛護の問題から難点があるかもしれません。しかし、それを反対するだけでなく、また簡単に容認するだけでもなく、どのような目的で爪を除去するのかを明確にしていかなければいけないでしょう。

 一般に行われる理由の幾つかは家具や壁を傷つけてしまうから、あるいは同居動物、または家族を怪我させてしまうから、というものです。
 たかが家具くらいとお考えになられる方もいらっしゃるかもしれませんが、人によっては、とても大切な家具というものはあるものです。また借りている住居であれば壁を破損しないようにする必要がでてくることもあるでしょう。家具の傷や壁の破損を防ぐために、かつ猫を捨てたり、安楽死をさせたりせずに、互いに心地よく同居をしていくためには爪の除去手術を受けるというのは一つの方法でしょう。また、これは大局からみれば、猫の命を救い、家族が幸せであるという方法ともいえるかもしれません。猫を飼うのを嫌がる人がその理由としてあげるものに家具を傷つけるからということがあります。爪の除去が行われていればこの心配が無く、猫にとって飼育され、安全に暮らせる場所がさらに増えていく可能性があります。
 同居動物や家族を怪我させる恐れがあるから、という理由もとても大切なものでしょう。十分に社会化をなされていない、あるいは遊ぶ時の手加減の仕方を教わっていなかった猫などでは遊ぶ時の手加減・噛み加減がうまくできないことがあります。
興奮し過ぎた時などに爪を引っ込めずに相手の顔を叩いて角膜を傷つけてしまうということがあるのです。一緒に暮らすうちにこれはある程度改善されていくのですが、改善する前に同居動物が目を傷つけてしまうということがあれば、安全のために爪の除去が推奨されるかもしれません。

 爪の除去手術は現在レーザー手術が発達しているため、痛みも大変少なくなっているようです。もちろん、しばらくの間は投薬や養生させることが必要ですが、手術直後から通常の生活(歩いたり、走り回ったり)ができるようになっています。また、前足だけ爪を除去し、後ろ足の部分を残していれば取っ掛かりがあるので、高い所に昇ったり、そこから下りたりも十分にできます。また、後ろ足の爪は通常の猫よりも発達するようです。
 前後の足ともに爪を除去した時には走った時やどこかに昇った時などにはブレーキをかけるものや引っ掛けるものがないため、滑りやすくなってしまったり、あるいは十分にジャンプしていなければ落ちたりすることもあります。このため、床の素材や猫が昇るような部分には配慮が必要となるでしょう。
 爪の除去手術を行った時に注意しなければならないことは、絶対に愛猫を外へ出さないことです。喧嘩をしたり、誰かに追いかけられたりした際には爪という道具がないため、命に関わることもありますので、注意を怠らないようにする必要があります。
 爪の除去手術が絶対にイヤだけれど、家具や壁は何とか守りたい、というような場合には猫の爪カバーと言うものがあります。ただ、これははがれるものなので、その際には動物病院で付け替えなければなりません。
 あるいは、家具や壁を守るのが目的であれば家具全体や壁に特殊なコーティングあるいはカバーをしていくのも一つでしょう。