健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

じゃれ猫ルーム
 
 春の日差しが暖かく、気持ちよくなってくるとともに、愛猫の抜け毛もふわふわとタンポポの綿毛のように、抜け始めてきますね。猫の体を撫で、そのなめらかな被毛に触れていると、様々なストレスの多い日々がいつの間にか癒されているような気がしますが、お掃除してもお掃除しても毛がふわふわしてくると、つい、ため息をついてしまうことも・・・何故、こんなに毎日毎日、毛が抜けるのでしょう?
毛周期ってご存知ですか? 換毛期 換毛期によくあるQ&A

毛周期ってご存知ですか?
 猫の毛、つまり被毛はずっと成長し続けるのではなく、一定の周期で発育します。この被毛の発育周期のことを毛周期と言い、3期にわけることができます。

成長期:被毛に栄養分を供給する毛乳頭の上で、毛母細胞という毛の元となる細胞がさかんに分裂します。その細胞が次々と角質化していくことで毛がどんどん伸びていくという時期です。

退行期:盛んに分裂していた毛母細胞が突然死んでしまい、それ以上毛が成長しなくなる時期です。毛根部は毛乳頭から離れ、徐々に上(皮膚表層)に押し上げられていきます。

休止期:毛を包んでいる毛包が縮んでいき、毛根部はさらに上に押し上げられます。
休止期の古い毛の奥には新しい毛の芽のようなものが生え始めています。そして、乳歯から永久歯に抜け替わるように、この新しい毛が成長してくると、古い毛がおしだされ、抜け毛となるのです。

私たちの毛が毎日、少しずつ抜けるように、猫の毛も毎日、少しずつ抜けていきます。ただ、私たち人間より毛の1本1本が細く軽く、そして、毛の量がずっと多いので、目立ってしまいがちですね。


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換毛期
 猫の被毛は日々少しずつ抜け変わっていますが、その毛の抜け変わりが一時的に激しくなる時期が春と秋に訪れます。これを換毛期といいます。換毛期は冬毛から夏毛に、また夏毛から冬毛に変わるためのものと言われていますが、どちらの季節が、より多量に毛が抜けるかご存知でしょうか? 

 答えは春です。 換毛には主に日照時間と気温が関係していますが、特に日照時間が大きく関わっています。冬から春になり、日が長く、また暖かくなってくると、木にも草にも新芽が出てきますね。これと同じように、猫も新しい毛が成長し始め、休止期にある古い毛(密集した冬毛)を押し出し、どんどん脱毛させていきます。これが春の抜け毛となるのです。春から夏にかけて生えてくる毛は密度が少なく、少し粗めの毛(夏毛)となります。夏の間もこれらの毛は少しずつですが、抜け変わりを繰り返しています。

 

  夏から秋にかけて、今度はどんどん日が短く、気温が下がってくると、柔らかく細い保温機能に優れたふわふわの冬毛が密集して成長してきます。この冬毛が生える時に夏毛を押し出し、脱毛させていきます。これが、秋の抜け毛となります。冬の間、ほとんどの毛は休止期に入り、成長期の毛が少なくります。このため、冬の間は新しい毛が生えず、また古い毛も余り抜けずに、猫の体を寒さから守る天然の防寒着の役割を果たしているのです。そして、春になると、この冬毛が抜け始める、というわけなのです。
このため、冬服の衣類のクリーニングにだすものが多量であるように、春の抜け毛もまた、秋に比べ、とても量が多くなってしまうのです。
 
ただ、近年の室内飼育されている猫たちでは、照明や冷暖房装置のために、サイクルが乱れてしまい、一年中毛が少しずつ生え変わっているということが少なくありませんが、やはり、春と秋には桁違いに抜け毛の量が増えてしまいます。
 

この抜け毛対策には、ブラッシングが一番です。特に年齢の高い猫の場合には、換毛期が若い時よりも長引いてだらだらと抜け続けることにもなりますので、飼い主のお世話が大切となってきます。

愛猫のブッラッシングをしていますか?(ブラッシングのすすめ)

 お布団に寝転がって日向ぼっこをしている愛猫にブラッシングをしていると、目をつむって、喉をグルグルと鳴らしながら、愛猫の手が『ムミムミ』しはじめます。愛猫の幸せな様子を見、喉の音に癒されながら、いつしか自分も猫と一緒に寝こけてしまうことも・・・。そんなことってないでしょうか?

 ブラッシングは抜け毛対策に有効なだけでなく、猫のグルーミングによる、毛球症を防ぐものでもあります。ブラッシングを日常的に行うと、グルーミング時に猫が飲み込む毛の量が少なくなり、毛球症になりにくくなるのです。
 皮膚に炎症があったり、できものができたりした時にも、普段からブラッシングを行っていると、早期に発見しやすくなります。

 優しくブラッシングを行っていると、皮膚のマッサージ効果もあり、次第に被毛もつややかになってくるだけでなく、猫がリラックスすればするほど、猫の免疫力があがってきます。ついでに、猫のリラックスしている様子を見ている飼い主もリラックスしてくるでしょう(笑)

※『ムミムミ』は、赤ちゃん猫が母の母乳を出そうと母猫の乳房を手足の指を開いたり、きゅっと曲げたりして押している様子を表す私の勝手な造語です。たまに成猫になっても気持ちがいい時にこの動作をおこなう猫がいます。

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換毛期によくあるQ&A

1.突然毛が良く抜け始めたのですが、大丈夫ですか?

 換毛期である春や秋に毛が多量に抜けるのは、自然の摂理です。ただし、正常な換毛の場合には、皮膚に異常はみられません。『皮膚に赤みがある』、『湿疹やカサブタがある』、『フケが多くなった』、『痒がる様子がある』という場合には、動物病院で診察を受けましょう。
また、正常な換毛では全身から少しずつ毛が抜けていきますが、ハゲはできません。 ハゲがある場合には、皮膚の異常が考えられますので、この場合も動物病院で診察を受けましょう。

2.嘔吐をした時に、毛の塊が一緒に吐き出されました。こんな時にはどうしたらいいのでしょうか?

 猫は自分で被毛の手入れ、グルーミングを行います。このグルーミングという行為は、被毛を清潔にし、匂いを少なくする役割だけでなく、猫自身をリラックスさせる効果があります。しかし、このグルーミングによって、抜け毛を飲み込み、これが胃腸で塊となって、胃壁が刺激され、嘔吐してしまうことがあります。これを毛球症といいますが、こんな時には、毛球の排泄を促す栄養補助食品を飲ませたり、毛球の排泄を促す食事に変更したりして、対処していきます。これらは、ペットショップや動物病院に何種類か置いてあります。また、毛球症の一番の予防は、猫が飲み込む抜け毛を少なくするために、飼い主の方が日常的にブラッシングを行うと良いでしょう。

ただし、嘔吐が繰り返される、食が進まない、という場合には、胃腸に異常がある可能性が高いので、一度動物病院で診察を受けましょう。
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