健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

じゃれ猫ルーム
Q1 避妊・去勢手術を受ける年齢は? 猫の避妊・去勢手術Q&A
Q2 手術前に気をつけておくことは?
Q3 手術前に検査は必要?
Q4 手術前に絶食・絶水するのは何故?
Q5 具体的な手術の流れは?
Q6 手術後の食事は何か気をつけることはありますか?
Q7 手術後、縫合の糸が外れてしまった時はどうしたらよいでしょうか?
Q8 手術後元気がなくなってしまっています。どうしたらよいでしょうか?
Q5 具体的な手術の流れは?
 猫をお預かり⇒麻酔⇒モニター機器装着⇒手術⇒覚醒⇒(入院+-)猫をお返しという流れになります。麻酔薬には様々な種類がありますが、投与量を少なくし、副作用をなくすために幾つかの薬を組み合わせることがあります。 麻酔の効き目がでてくると猫がおとなしくなってくるため、この時に手術部位の毛を刈り、心電計や体温計、血中の酸素飽和度を見る装置などのモニター機器を装着していきます。(人間の場合には意識がある状態で毛を刈ったり、モニターをつけたりということに協力してくれるのですが、猫ではそうは行かないですね)雌猫の場合は腹部を、雄猫の場合は睾丸の周囲の毛を刈ります。
  次いで、手術部位を外科用イソジン液や70%アルコールで何回も消毒し、覆い布という滅菌された布をかけ消毒されていない部分を覆います。そして、手術ということになります。
雌の場合…子宮と卵巣を一般に摘出しますが、卵巣だけを摘出する場合もあります。開腹手術であるため、卵巣-子宮を摘出した後、お腹の筋肉や皮膚を縫っていきます。
雄の場合…精巣を摘出します。摘出した後に睾丸の切開創を縫合する場合や生体用接着剤で閉じる場合があります。
 手術終了後は麻酔が覚める(覚醒)まで監視下に置かれます。その後、手術部位を舐めないように服を着せられたり、エリザベスカラーというパラボラアンテナのようなカラーを首にはめられたりします。これらの処置は舐めることで手術創に口腔内の雑菌が侵入したり、術創が開いたりしないように、また、糸を噛み切ったりしないようにするため必要なことです。
術後の状態を診る為に入院が必要なことがあります。多くは一泊二日の入院となりますが、各動物病院の方針、また猫の状態によっても変わってきます。
メニューへ戻る
Q6 手術後の食事は何か気をつけることはありますか?
 バランスの取れた食事であれば、何でもかまいません。ただし、手術後は傷口を治すために体が必要とするカロリーは一時的に増加しています。抜糸 までは少し多めに与えると良いでしょう。ただし、手術の影響から回復した後はカロリー計算をしっかりしていかないと愛猫が肥満してしまうこともありますので、ご注意ください。
メニューへ戻る
Q7 手術後、縫合の糸が外れてしまった時はどうしたらよいでしょうか?
 縫合糸が外れ、皮膚の下の組織が見えているというような時にそのまま放っておくと化膿してしまうこともありますので、できるだけ早期に動物病院に連れて行きましょう。状態によっては再縫合や消毒とガーゼなどの被覆剤で覆うということが必要な場合があります。 
メニューへ戻る
Q8 手術後元気がなくなってしまっています。どうしたらよいでしょうか?
  手術の痛みなどで元気がない場合や、カラーや服などの装着が嫌で元気がない場合もありますが、手術部位の炎症がひどくなって発熱しているなどといったことも考えられます。このため、一度獣医師の診察を受けるようにしましょう。
メニューへ戻る
最後に
 手術をする前に疑問に思うことは獣医師にどんどん尋ねましょう。愛猫の健康管理をするのは飼い主の皆様です。愛猫に代わって避妊・去勢手術に対しての知識を持つようにしましょう。「主治医の先生は忙しそうで…」と気後れする必要はありません。主治医に質問するのは飼い主の権利です。そして、飼い主の方のご質問にお答えするのは獣医師の義務なのですから。
また手術を受けた後に少しでも普段と違うというようなことがあれば、獣医師に診察してもらうようにしましょう。早期発見早期対処が元気な状態への近道です。
メニューへ戻る
おまけ~初めての手術~
 初めて猫の避妊手術を経験した時、患者は自分の猫でした。といっても助手としてですが…。まだ学生の頃のこと。動物病院に連れて行って避妊手術を依頼した時に獣医学生だと話すと、院長が助手をしてみるか?と聞いてくれたので、「はい!」と即答した結果です。今にして思えば院長が経験豊かだったため、何の経験もない学生を助手にしても手術を成功させる自信があったのでしょう。
 その頃、大学で学んでいた解剖や生理の知識は牛や馬、豚、鶏、そして犬のことだけ。猫の体の内部はまったく見た事がありませんでした。初めての猫の手術ということで、帰宅後愛猫をなでながら外科手術の本を読み、ノートに術式を書き写し、手術のイメージを頭の中で作りあげ、ドキドキしながら手術に挑みました。
 いざ、愛猫の手術当日、麻酔をかけられ、無防備に毛をそられたピンクの肌が次々と滅菌覆い布で四角く囲まれ、目の前で準備されていきました。
 院長がメスを持ち、皮膚に切開を加えます。「臍の下からメスを入れるんだよ」といいながらメスをススッーっと動かすと、私の目にオレンジピンクの塊が目に入ってきました。「先生、猫の筋肉ってオレンジ色をしているんですか?」とおおぼけな事を言うと院長は一言「これは脂肪だよ」。「・・・・・・・」赤面しつつ黙る私。犬や他の動物の脂肪はみんな白っぽい色をしていたから、というだけでなく、まさか愛猫のお腹にこれだけの皮下脂肪がついているとは思いもしなかったのです。
 手術はあっという間に終わった気がしましたが、多分30分くらいだったでしょうか。何も知らない学生に説明しながらだったので、少し時間がかかったようでした。そのありがたい説明も卵巣を出し、子宮を摘出しという過程も初めての助手で緊張していた私の記憶には全然残っていません。ただ、最後に皮膚を縫合する時、「“皮内縫合”をするから傷跡は目立たないよ」という言葉だけが今も残っています。その後何度も手術を経験しましたが、皮膚縫合の時にはいつもこの言葉が頭に浮かんできます。
メニューへ戻る