健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

お昼休み~おタケ先生の私的猫との暮らし編 その1
 ようやく子猫についての授業が終わりました。まだまだ書きたいことが山ほどある のですが、それは、別の時に置いておいて、そろそろ子猫から別のところへ移ろうか、 題材を何にしようかと思案中の今日この頃、愛猫との出会いとその暮らしについて触 れてみようと思います。

 猫を育てていると、今(現在)に夢中になり、過去を忘れ、未来を失念してしまいがちなので、記憶を辿りつつ書いていこうと思います(笑)。まずは、愛猫にぃあとの出逢いからお話ししましょう。
 
ハプニングな出逢い~おねしょ~ ここでは爪とぎしないで!を教えるには?
猫にもしつけはできる!~爪とぎ編~ 爪とぎを禁止したら縄張りがなくならない?
爪とぎの役割  
ハプニングな出逢い~おねしょ~
 
猫と初めて同居した時も2匹目の猫を迎え入れた時も、様々なハプニングがありました。最初のハプニングはまさに出遭った時のことです。

 昔、私がまだ獣医学科の学生の頃、手の平サイズの長女猫と出会いました。実習現場に向かう日のことです。兄猫と妹猫らしき子猫が二匹、大学の学生控え室の中で置き去りにされているのを友人とみつけました。小さくて可愛くて、上着のポケットに入れたたまま実習していたら、いつの間にかポケットの中で眠ってしまった子猫。

そのままポケットに入れていたら、おねしょをされてしまい、慌てて上着を脱ぐはめに。 近場の水場で洗い、濡れた上着で帰途につきました…。それがきっかけで妹猫の方、後の愛猫、にぃあが私の手元にくることになりました。まさにおねしょが取り持った縁です。

 ちなみに、兄猫はその時一緒に見つけた友人の親戚の手元に行き、幸せにふくふくと暮らしているそうです。なんと体重8キロとか…。
 
猫にもしつけはできる!~爪とぎ編~

 猫には自由気まま・傍若無人なイメージがついているかもしれません。『お猫様』とも言われることがあるくらいですから(笑)。
そんな猫と暮らすと畳や柱、扉だけでなく、お気に入りの家具がぼろぼろになっても当たり前、仕方のないこと…と思ってしまっていませんか?

私は借家住まいだったため、爪を磨がれたら大変と、爪とぎのしつけには結構苦労した覚えがあります。猫が爪を掛けそうなところ全面にコルクボードを張ったこともありました。子猫のジャンプ力って侮れず、最終的には扉全体と、部屋の角全てに張ることになりました(笑)。

今では笑い話なのですが、その頃はコルクボード代だけでも泣きそうになっていました。その甲斐あって、今まで複数回のお引越しをしていますが、どの部屋も壁や扉には猫の引っかき傷はほとんどありません。(少しはやっぱりありますよ)

ただし、猫がジャンプの際、足場に使う家具などは、後ろ足のキックでどうしても傷はついてしまいます(--;)。これは猫の体の構造上仕方の無いことなので、この対策は「諦める」か、「厚手のシートを張る」といったことになりますね…。

 さて、『猫の爪とぎ、どうやってしつけるか?』をお話していきますが、その前に 何故猫が爪を磨ぐのかを知っておきましょう。
 
爪とぎの役割

 畳やふすまがぼろぼろになるのは、猫が爪を研ぐ習性があるからです。この爪を研ぐというのは、2つの役割があります。

ひとつは狩りのために大切な爪を常に尖らせておくためのものなのです。柔らかい場所で磨いでも意味が無いのでは?とお考えの方もいるかもしれませんが、実は猫の爪の構造から柔らかい場所でも大丈夫なのです。

猫の爪はその先が丸くなった頃には、中に新しい爪が生えてきています。このため、爪とぎという行動は古い爪をはがす(鞘をはがすともいいますね)、という目的で行っているので、硬いところでなくても爪は次々と尖ったものになるのです。

 爪とぎのもう一つの役割はなんでしょうか?これは『匂い付け』。猫の体には幾つかの臭腺といって、匂いをだす場所があります。その一つが爪の周りにあります。このため、爪とぎは『自分の匂いを周囲にこすり付ける』動作でもあるのです。つまり、 猫の爪とぎはここが自分の安心できる場所、縄張りなんだよ~と自分自身や周囲の猫に対して教えている行動なのです。

この目的で爪を研いでいる猫は、伸びをしながらだったり、さぁ今から元気に遊ぶぞ~というようなリラックスした状態や元気一杯の状態の時に行っていませんか?でも、時々は怠惰に、惰性で行っていることもありますね。
 
ここでは爪とぎしないで!を教えるには?

 さて、このように爪とぎには明確な役割があり、本能で行っていることなので、完全に爪を磨がせない、ということ不可能です。ではどうすればいいのでしょうか?

 まず代替物(爪とぎ器)を用意します。今様々な種類の爪とぎ器が市販されているので、愛猫が好む素材を探してみましょう。ちなみに、にぃあ(おタケの愛猫)はダンボール製のものがお好みです。

その他に絨毯素材などがありますが、時々間違って本物の絨毯で爪を磨いでしまうことがありますが、それはご愛嬌と思ってあげましょう。人であれ、猫であれ、完璧というのは難しいものですから(笑)。

 爪とぎ器を用意したら、猫が爪を磨ぎたそうな様子を見せたときに、爪とぎ器のところへ連れて行って、もしくは爪とぎ器を猫の所まで持って行って、猫の手をそこにそっと誘導してあげましょう。

ここでのポイントは爪を磨ぎ始めたら、ではなく、磨ぎたそうな様子を見せたら!です。そうすれば、今楽しくやり始めたことを阻止された、という印象ではなく、楽しくやることを教えてくれた、という印象が猫の頭の中でできあがります。
 
 爪とぎ器で爪を磨いだら、もれなく褒めてあげましょう。猫も褒められることが大好きです。でも、褒め方は犬と同じ(はしゃいだ高い声など)ではいけません。リラックスした、少し優しい小さめの声で褒めてあげましょう。好きな場所を撫でてあげる、 そこで爪を磨いだ後にはご褒美(おやつ、おもちゃで遊ぶなど)をあげるというようにすると、より良い効果がでてきます。

また、爪とぎ器で爪を磨ぐと褒められる、良いことがある、ということを猫が覚えるまで、根気よく教えてあげることが必要です。 爪とぎ器の置き場所は、床の上や猫がう~んと背伸びをした高さで、猫が安心できる場所に設置すると良いでしょう。

 ただ、気をつけなければいけないのは、猫によっては複数の場所で爪を磨ぎたがることがあります。それは先に述べたように、匂い付けのためでもあるからです。そのため、爪とぎ器を複数用意してあげることも大切なポイントとなってきます。また、しつけが完全に済むまではどうしても爪を磨がれたら困る、という場所にはプラスチック板、アルミ板などといった、猫の爪が引っかからないような素材で覆いを掛けておく必要があります。

 もしくは、始終そこを見張っていて、そこに猫が爪を磨ぎそうになったら『シッー』とか『シャッー』、『アァー』といった大声を出すようにします。そこでは爪を使ってはいけない、と猫が思うようになったらしめたものですね。決して体罰を加えてはいけません。体罰は爪とぎと結びつくかもしれませんが、その前に、体罰を加えた飼い主を嫌いになってしまう、恐れてしまうこともありますので。
 
爪とぎを禁止したら縄張りがなくならない?

 爪からの匂いを付けることが出来なくても、猫は顔にある臭腺を使って『ここが自分の安心できる場所、縄張りなんだよ~』という匂い付けができるので、その点はご安心を。

猫は顔を様々な場所にスリスリとこすり付けていますよね?これは、そんな意味があるんですよ。いつのまにか、飼い主が愛猫の所有物・縄張りの一部になってしまっていることも(笑)