「敬老の日」は過ごしやすい気候の時期に、『お年寄りを大切にし、その知恵や知識を敬う日』として、兵庫県のとある村から始まったのが由来のようです。1966年から国民の祝日となり、ご年配の方に感謝し長寿をお祝いすることが慣わしとなりました。また、2003年から9月15日からの1週間が敬老週間と定められています。
私の愛猫の1匹が今年の夏に9歳となりました。ふと気づけば艶やかで茄子のように真っ黒だった背中に白いものが増え、動作も少し鈍くなり(肥満のせいかも知れませんが・・・)、以前よりおもちゃで遊ぶ時間が減ってきました。
手のひらに乗るくらいだった子猫が、今では7キロを越える巨体へと成長し、そして老いていっています。
幼い子犬・子猫として、あるいは元気いっぱいな成犬・成猫として手元にきたのに、いつの間にか私たち自身よりも年をとってしまう愛犬・愛猫たち。敬老週間にちなんで、彼らのシニアライフについて考えてみませんか?
人間と同じように犬も猫も成長し、そして年をとっていきます。老化自体は病気ではありませんが、老化に伴って体にはある変化が起こってきます。
年をとると、五感の機能や運動能力が低下し、視力や聴力、味覚などが鈍くなり、骨や関節に異常が起こりやすくなってきます。体を守っている免疫機能も低下し、細菌やウィルスなどの感染症にかかりやすくなるだけでなく、腫瘍ができることもあります。
長年働いてきた臓器の機能も徐々に衰え、動きが悪くなり、あちこちに支障をきたすことがあります。このため高齢になると、関節炎や呼吸器・心臓疾患、胃腸障害(下痢や便秘)がよくみられるようになります。
また、体の中を一定の状態にしようとする機能も徐々に低下し、暑さや寒さに弱くなったりするだけでなく、内分泌性疾患(糖尿病/甲状腺機能低下症/副腎皮質機能亢進症など)を患ってしまうことも。
『若いうちは柔軟性がある、適応性が高い』とか言われるようなこれらの能力は、若くなくなったら(老化し始めたら)低下していきます。新しい環境に適応したり、苛酷な環境に耐えたりすることが難しくなってくるのです。このため、老犬・老猫にかかるストレスはなるべく少なくなるように工夫していきましょう。
★ストレスとは生物になんらかの影響を与える外的あるいは内的な刺激を与えるものです。例えば、温度や湿度、光そして音といった外部刺激は当然生物に影響を与えますが、嬉しい、悲しい、怖いといった感情も同様に生物に影響を与えています。これらはすべてストレスの要因(ストレッサー)となるのです。ここから考えると、生きている間、常に生物はストレスにさらされていることになります。しかし、『ストレス=悪いもの』ではなく体に悪い影響を与えるものもあれば、良い影響を与えるものもあるのです。適度なストレスは体に良いこととされています。
犬と猫を何歳から老犬・老猫と考えるべきでしょうか?
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体の機能が衰えてくると、暑さ・寒さは以前よりも辛いものとなってきます。高齢であれば、快適な温度・湿度のもとで過ごさせてあげましょう。
愛犬や愛猫のよくいる場所で温度をチェックし、冷房時であれば27度前後、暖房時であれば20度前後にしてあげると良いでしょう。湿度は60%前後が快適となります。人間とほぼ同じですね。
※ 室温を調節しにくい時や暑がり・寒がりのペットのために冷却マットや保温マットを用意し、自由に行き来できるようにしてあげるのも良いでしょう。
室外飼育では室温の調節はできないですね。こんな場合には、季節に応じて日陰や風通しを考慮し、小屋の中に保温・保冷素材のものを入れてあげるのも一つです。
高齢になると眠っている時間が長くなり、体の抵抗力が低下してきます。このため、ある程度目が届く範囲に愛犬・愛猫がゆっくりとくつろげる場所を用意してあげます。寝具・敷物は通気性がよく、適度な弾力があるものを選び、常に清潔にしておきましょう。特に、病気の場合には普段より汚しがちなので、丸洗いができるもの、あるいは汚れが簡単に拭き取れるものが望ましいですね。但し、タオルなどのパイル生地は爪を引っ掛けてしまうことがあるので、タオルを使う時は綿などのシーツでくるんでから使用すると事故を防ぐことができます。(爪もこまめに切りましょう!)
段差の昇り降りは関節に負担がかかります。特に降りる時の方が、関節への負担が大きくなります。高齢になれば関節のクッション機能が低下し骨に衝撃が伝わりやすくなるため、ジャンプや階段の昇り降りは関節を痛める原因にもなりかねません。椎間板疾患や関節疾患を持っていればなおさらです。
症状が現れていても、いなくても高齢ペットのためにはできるだけ段差を少なくするようにしてあげたいもの。バリアフリーとはいいませんが、できる範囲で工夫していきましょう。
※ 猫では高齢になると肥満が原因で関節を痛めることがあるので減量を心がけましょう。(猫は禁止をものともせずに高い所にジャンプしてしまいますから…)
高齢になると、毛の抜け代わりがだらだらと長く続いてしまったり、グルーミングを余りしなくなったりしてしまいます。体の免疫能力も低下しがちで、体が汚れていると、そこが蒸れ、病原菌が侵入し皮膚炎を起こしてしまうことがあります。
それを予防するためにも日々ブラッシングをし、時には入浴させてあげましょう。体が大きくて、あるいは入浴嫌いだから、というのであればブラッシング後に人肌程度に冷ました蒸しタオルを使って表面の汚れを取ってあげるだけでもかなり違ってきます。
今は犬猫用のドライシャンプーや衛生グッズが色々あるので、これらを試してみるのも。
医食同源と言われているように、食事は体の基本です。実際に病気の症状に合わせた食事(処方食)は病気の進行を遅らせたり、回復を助けたりします。
年齢にあった、また個々の体質にあった食事を与えるようにしましょう。ただし、高齢動物の多くは肥満傾向となりがちです。くれぐれもカロリーオーバーとならないようにご注意を。
ペットフードは多くの会社が研究し作り出しています。手軽で、かつ栄養バランスが取れているのでお勧めですが、どの子にも、どの製品でも合うという訳ではありません。毛並みや体調、排泄物の状態から愛犬・愛猫それぞれに適しているものを選んでいくと良いでしょう。
手作り食も栄養バランスがとれ、体にあっているようであればチャレンジしてみるのも楽しいかもしれませんね。
どちらにしても、あげすぎは禁物です。肥満は万病のもとですからね。
年をとったから、あるいは眠ってばかりいるから運動はしないほうが良い、というわけではありません。適度な運動は肥満や、筋肉が衰えるのを防ぎますし、胃腸運動が活発になって、食欲が増し排便も順調となることがあります。
高齢犬は若い時の7~8割程度の距離をゆっくりと散歩させ、季節の風や匂い、お散歩仲間と出会う楽しみを作ってあげましょう。足腰が弱っている場合は可能であれば補助をしてあげて、短時間でも散歩を楽しませてみては。病院に入院していた起立困難な犬でも腰を支えての散歩に連れて行ってあげると、とても楽しんでいたものです。簡易プールがあり、かつ愛犬が水を怖がらなければ、水泳を楽しむのもいいでしょう。水泳は関節への負担が最も少ない運動ともなります。
※ 呼吸状態、舌の色、歩き方をチェックしながら運動量を決めましょう。何らかの病気になっているときには主治医と相談しましょう。
また、高齢になっても簡単なトレーニングを毎日短時間だけ続け、アイコンタクトを忘れないようにしましょう。そして、基本的な号令に従うことができたら、すかさず褒めてあげることを忘れないようにしましょう。犬にとっては飼い主の号令に従い、そして褒められることは幾つになっても生きがいなのですから…。
猫であれば、おもちゃや遊び方に工夫をし、飽きないように短時間ずつ、日に何回か遊んであげるようにしましょう。
高齢に伴って昼夜が逆転してしまい、夜鳴きをしてしまう犬や猫がたまにいます。こんな場合には昼間静かに眠ってくれているからと放っておくのではなく、明るい時にお散歩をし、遊んであげましょう。そうすることで夜はぐっすりと眠ってくれるようになることがあります。一度試してみてください。
高齢になれば体をあまり動かすこともしないため、血行も悪くなり、筋肉のコリが触ると感じられるようになります。そんな愛犬・愛猫のためのマッサージ方法を書いた本が、今数多く出版されています。そんな本を片手に、短時間でも良いので愛情をこめて全身を優しくマッサージして、コリをほぐしてあげませんか?
高齢疾患の最たるものの一つに腫瘍があげられますが、マッサージを日々していると、全身を触るため、早期に腫瘍を発見できやすくなります。
ペットと暮らすことはペットの健康管理を行うことでもあります。食欲や毛の艶、排泄状態などを毎日チェックしてあげ、異常があれば動物病院で診察を受けさせることが病気の早期発見・治療の近道です。ですが、なかなか症状を現さない臓器の異常の有無をチェックするためには定期的な健康診断が必要となってきます。
人間に比べれば1年間に4倍のスピードで年をとっていく愛犬・愛猫たち。元気なように見えても臓器の機能が徐々に低下してしまっていることがあり、症状がでたときにはすでに手遅れということも…。そんなことのないように、若齢の間は年に1回、中年齢~高年齢になれば年に2回の健康診断を受けましょう。
また、重い病気や難しい病気の時には大学病院のように設備がそろっている病院が良いかもしれませんが、そういった動物病院は患者数も多く、ゆっくり主治医と話す機会が取れないことがあります。老犬・老猫ではしょっちゅう体の不調を訴えることがありますから、日常的な健康管理や看護で困ったこと、不安なことを気軽に話すことができ、必要に応じて専門的な獣医師に紹介してくれるようなかかりつけの動物病院を近所に持っておくことが勧められます。
私たち人間よりも早くに年をとってしまう愛犬・愛猫たち、共に暮らした長い時間と同じだけ、この先も一緒に、そして楽しく過ごして欲しいもの。工夫を凝らし、彼らのシニアライフをもっともっと快適にしてあげましょう。