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涙の不思議

●写真/資料提供 千寿製薬株式会社

飼い主のみなさんあなたの大切なワンちゃん、ネコちゃんの目を観察したことがありますか?ところで、意外と知られていないのが「涙」の重要性です。「涙???」と驚かれる方がいらっしゃるかもしれませんね。みなさんが想像される「涙」とは、嬉しいとき、悲しいとき、悔しいとき、痛いときなどに目から流れ出る「涙」ではないでしょうか。

涙のはたらき

もし、「涙」が多くなったら…目はなんらかの刺激を受けているかもしれません。

 「涙」には、洗浄作用、殺菌作用、保護作用があります。たとえば、目に毛、まつげ、虫、ゴミまたは砂等の異物が入ったときには、この異物を除去するのを助けます。また、細菌・ウィルス等による感染症の治癒を助け、目に傷をしたときや打撲したときには傷等の治癒を助けます。

フローレス試験紙を用いる検査

 湿らせたフローレス試験紙を結膜嚢に接着させた後、生理食塩水で洗眼し、コバルトブルーフィルターと照明器具(直像鏡、フィノフトランスイルミネーター、ビジティングランプ、細隙灯顕微鏡等)で観察します。

 しかし、流れ出るだけが「涙」ではないのです。ワンちゃん、ネコちゃんの「涙」は主に涙腺と瞬膜腺から分泌されます。

 分泌された「涙」は目を潤したのち、瞬きすることにより涙点から鼻へ排出されます。ワンちゃんの目は、通常約30μL(※μL=マイクロリットル。1μLは100万分の1リットル)の「涙」で充たされており、1分間に約30%の割合で新しい「涙」に入れ替わると言われています。

 また、ネコちゃんの目でも1分間に約15%の割合で新しい「涙」に入れ替わると言われており、目は常に新鮮な「涙」で潤っています。

実は、この「痛い」ときに目から流れる「涙」が重要なのです。

何が原因であるかを早く突き止め、刺激となっている異物の除去または原因に対する治療を始めなければなりません。異物が目に入り、二次的に結膜、角膜に炎症が生じたものは結膜炎、角膜炎とよばれ、その原因が細菌・ウィルス等である場合には細菌性またはウィルス性結膜炎、角膜炎とよばれています(下の写真を参照)。

また、角膜に傷を受けることにより、角膜に炎症が生じたものは創傷性角膜炎とよばれ、角膜組織が大きく欠損した状態は角膜潰瘍とよばれます。これは動物病院での簡単な検査(拡大鏡を用いた検査、結膜の細胞診、フローレス試験紙を用いる検査等)で調べることができます。

拡大鏡を用いた検査

拡大鏡と照明器具を用いて異常な部位を確認する。

結膜の細胞診

麻酔薬を1滴点眼し、約5分後結膜から検査用サンプルを採取し、染色後顕微鏡で検査します。

実は、目を潤すということが「涙」の重要な働きの1つなのです。

涙の産生・排出

 「涙」は目を潤すことにより、角膜の乾燥を防ぎ、角膜の厚さを調節し、角膜表面の凹凸を滑らかにすることにより、鮮明な映像を結ぶのを助けます。

 ワンちゃんでは1分間に約10~12回瞬きをすると言われていますが、瞬きをするときには、結膜と結膜、結膜と角膜の間に摩擦が起こります。「涙」は潤滑作用によりこれらの摩擦を和らげます。

 また「涙」には、目の表面温度を一定に保つ働きや目に栄養分を運ぶ働きがあります。


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