健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

肥満の予防と対処について

肥満が招く病気

 肥満は万病の元とも言われており、実際に肥満から来る病気、あるいは肥満により悪化する病気はとても多くあります。
 肥満したペットは健康上の問題が多く、それによって獣医にかかる費用は肥満していないペットより10%以上高くなる可能性があるともいわれています。

 肥満が招く、あるいは肥満によって悪化する病気は関節障害・心臓や肺の病気・肝臓の病気・糖尿病といったものがよく挙げられます。余分な脂肪の分だけ体の各臓器に負担がかかってしまうのです。また、近年犬や猫での難産、帝王切開が増えています。肥満していると難産の傾向にあるので、子供をと望んでいるのであれば適正な体重を心がけましょう。
 これだけでなく、万が一、愛犬や愛猫が手術を受けなければ、という事態に陥った時、肥満していると麻酔リスクが高まってしまいます。脂肪に麻酔薬の蓄積が起こるため、麻酔がかかりにくく、覚め難くなるから、という理由だけでなく、脂肪が心臓や肺、肝臓といた重要な臓器に日々負担をかけ、それら臓器の機能を低下させてしまっていることが一因です。

 その他に余り知られていませんが、肥満していると免疫能力が低下し、様々な皮膚病や腫瘍などにもかかりやすくなってしまうことが明らかになっています。
 病原菌や腫瘍細胞から体を守っている免疫能力が低下するということは、様々な感染症や腫瘍にかかりやすくなり、そこからの回復力も遅くなります。
 百害あって一利なしの肥満、では、肥満にさせないためにはどうすればよいのでしょうか?

肥満を予防するには

仕事が忙しいから、今日は疲れているから…と愛犬・愛猫の体のお手入れを怠ったり、遊んであげる時間が減っていたりはしていませんか?
 鳴かれたり、甘えてこられたりした時、一緒に遊んであげるのではなく、おやつやフードをあげ、それを愛情表現としていませんか?
 犬や猫は人間と同じように寂しさを感じます。そして、寂しい気持ちを紛らわせるために過食傾向になってしまうことがあります。

寂しいから、退屈だからと飼い主に甘えていくと、
飼い主がおやつを渡してくれる。
でも、遊んでくれない…。
おやつを食べてストレスを紛らわしていくうちに、
体重がいつの間にか増えてしまう。
体重が増えると動作が緩慢になり、
運動を嫌がるようになってしまう。
飼い主が遊ぼう、と声をかけ、おもちゃを振り回しても、
体が以前より重くなってしまっている愛犬や愛猫の反応は
鈍くなってしまっている。
それを見た飼い主は「この子が喜ぶのは、
遊んであげることよりもやっぱりおやつよね。」と
おやつを取り出して与えてしまう。
愛犬や愛猫は更に太ってしまう。
という悪循環が繰り返えされてしまうことにあります。

 愛犬・愛猫を肥満にさせないためには、まず愛犬・愛猫それぞれの体格や運動量に応じた一日に必要なカロリーを計算し、むやみにおやつを与えたり、欲しがるだけフードをあげることはやめましょう。
かかりつけの動物病院で、一日に必要なカロリーを計算してもらうと良いでしょう。ただし、計算されたカロリーはあくまでも目安ですので、定期的に体重を量って適切なフード量を飼い主の方ご自身が決める必要があります。
※ 同じ犬種であったり体重が同じくらいの犬や猫であっても、個体差があるため、計算された量より若干大目の場合もありますし、逆に少なめで大丈夫な時もあります。
おやつをあげる場合は、一日に必要なカロリーの10%未満と決めておきましょう。
 愛犬や愛猫が一日に消費するエネルギー量を増やすように散歩や家の中の遊び場所、また遊び方などを工夫してみましょう。
犬の場合、飼い主との散歩は運動手段の一つでもありますが、飼い主とのコミュニケーションを深めるための手段でもあります。常に飼い主がリードしながら、散歩の中に愛犬とのアイコンタクトやしつけを兼ねた遊びを盛り込んでみると良いでしょう。
猫では飼い主から遊ぼう、と働きかけるのではなく、猫が甘えてきた時に遊んであげることで、飼い主と猫の関係がより良いものとなります。
猫が甘えて近寄ってきたら、猫の興味の持つようなおもちゃを使ったり、遊び方を工夫してあげたりして、短時間でも良いのでなるべく頻繁に遊ぶことが勧められます。
 ブラッシングやマッサージは愛犬や愛猫のストレスを緩和すると同時に体の血行を促し、新陳代謝を活発にします。
 また、これらは愛犬や愛猫と触れ合うことになるので、常に体に異常がないかどうかをチェックすることもできます。短時間でもいいので、今日から始めてみましょう。
 「コロコロしていて、とってもかわいいわ」「撫で心地もいいし、触っていると気持ちがいいの」なんて思っていませんか?愛犬・愛猫たちの体重の変化に気をつけて、肥満を予防し、もしすでに肥満の状態であるなら早く獣医師と相談して適切な治療を受けてください。
 肥満によって健康を損ねたりすることのないように、飼い主さんがしっかり注意してあげましょう。
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