健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

ワクチン接種

定期的なワクチン接種で愛犬・愛猫たちの病気を未然に防ぎましょう。

 ワクチンの接種で予防できる病気というのは、感染すると命にかかわるかもしれない恐ろしい病気です。
 これらの病気にかかってしまう前に、あらかじめワクチンを接種して犬や猫の体の中に抵抗力をつけておき(抗体と呼んでいます)、万一感染しても体を守り発症しないように、また、発症しても軽症で済むようにしておくことがワクチンを接種する目的です。
 子犬や子猫は、母親からの初乳を介して、母親の持つ免疫を譲り受けます。これを移行抗体と呼んでいますが、この母親から譲り受ける免疫は、一時的なものでしかありません。
 移行抗体が有効な期間はそれぞれの病気によっても異なりますし、徐々に効果はなくなります。この移行抗体の効力が切れる時期が、病気に対する抵抗力が失われる、子犬や子猫たちにとっても大変危険な時期といえます。
 しかし、母親譲りの免疫がまだ少し残っている時期にワクチンの接種をしても、十分な免疫効果を得ることができません。そのため、より確実に免疫を作るために、初回の接種の後、1回から2回の追加接種を行います。
 ワクチンの接種によって作られる免疫も一生続くものではありません。動物病院で獣医師と十分に相談し、継続してワクチン接種を受けるようにしてください。予防できる病気は必ず予防しておきましょう。
 また、犬の飼い主さんは、狂犬病の予防接種も毎年忘れずに済ませてください。

診察時は、犬も猫も動いたりしないよう、しっかり飼い主が保定します。

■子犬の場合-生後2ヵ月頃の時期から生後3~4カ月の時期の間に、2回から3回の接種を行います。その後も獣医師とよく相談して継続して接種してください。
■子猫の場合-生後2~3カ月の時期に1回目の接種、1回目の接種から2~4週間後に2回目の接種を行います。その後も獣医師とよく相談して継続して接種してください。

ワクチン接種で予防できる病気

Dogs
ジステンパー

 ジステンパーウイルスによって感染し、うつりやすく死亡率も高い、犬の代表的な病気です。感染力が強く、死亡率も非常に高い病気で、空気感染と、ジステンパーウィルスに感染した病犬から直接うつる場合があります。子犬に発生がもっとも多くみられ、感染すると発熱や食欲がなくなる、膿性の鼻汁、目ヤ二といった初期の症状から、呼吸器系、消化器系に広がり、激しい咳(呼吸器)や下痢、脱水(消化器)などの症状が現れ、てんかん様発作、後躯麻痺等の神経症状を示し、衰弱死してしまいます。

犬コロナウイルス病

 犬コロナウイルスによる伝染病で、子犬の場合の症状は嘔吐と中~重度の水様性下痢を引き起こします。潜伏期は1~2日で、軽い胃腸炎の症状の後、多くは回復します。このウイルスは感染した犬の便や尿に放出され経ロ感染します。

アデノウイルス1型(犬伝染性肝炎)・アデノウイルス2型感染症

 犬アデノウイルスには1型と2型の2種類があります。1型は、子犬の突然死(かかって一晩で死ぬ場合があります)や、発熱、元気がなくなる、食欲がなくなる、嘔吐、下痢、扁桃腺のはれ、目(角膜)が白く濁るといった犬伝染性肝炎の症状をおこします。2型は、肺炎や扁桃炎など呼吸器病を引き起こします。現在2型のワクチンで1型の犬伝染性肝炎も予防できることから、2型ウイルスによるワクチンが主に用いられています。

パルボウイルス感染症

 パルボ(極小という意味)ウイルスによる急性伝染病で1979年にアメリカで発見され、その後世界中に広まりました。犬パルボウィルスは、チリやほこりに混じって長期間生存する、たいへん抵抗性の強いウイルスです。母犬譲りの免疫のない子犬が突然死してしまう心筋型と、激しい下痢や嘔吐を特徴とする陽炎型があります。子犬の場合は、特に症状が重く、死亡率も高いので、注意が必要です。

レプトスピラ症

 レプトスピラ症は、犬だけでなく他の動物や人にも感染の可能性がある伝染病で、細長い螺旋状の細菌であるスピロヘータによって起こります。病原菌は尿中に排泄され、この病犬の尿と 接触することにより感染します。ネズミの尿も感染源になります。症状には黄疸出血型と力二コーラ型の2タイプがあり、黄疸出血型では、黄疸の他に嘔吐、下痢、歯茎からの出血、血便 などがみられます。カニコーラ型は嘔吐、下痢による脱水症状、体温の低下などがあり、手当が遅れると尿毒症を起こし死に至ります。最近はへブドマディス型を予防できるワクチンも用意されています。

犬パラインフルエンザ

 犬パラインフルエンザウイルスは、単独での感染症よりも犬アデノウィルス2型、犬アデノウイルス1型、ボルデテラ、マイコプラズマなどいろいろなウイルスや細菌と混合感染して、気管支炎や肺炎、または一般に「ケンネルコフ」と呼ばれる呼吸器系の疾患をおこすものとして知られています。伝染力が非常に強く、病犬との接触や、咳やクシャミなどから空気感染を起こすこともあります。気管、気管支、肺に炎症をおこし、激しい咳が特徴です。

猫ウイルス性鼻気管炎

 猫のヘルペスウィルスが原因の病気で、感染猫のクシャミや分泌物などからうつる、猫の「鼻カゼ」ともいわれているものです。
症状は、急に元気がなくなる、食欲がなくなる、そして発熱、鼻ミズ、クシャミ、目ヤ二などがでる、といったものです。
下痢をし脱水症状を示して衰弱が進み、死ぬこともあります。

猫汎白血球減少症(猫伝染性腸炎)

 猫のパルボウィルスが原因の病気です。感染力が強く感染してから急激に症状がでることもあり、体力の弱い子猫など1日で死ぬこともある恐ろしい病気です。最初は食欲がなくなり、水も飲まずにうずくまった状態になります。白血球が極端に減少し、発熱、激しい嘔吐、時として血便や下痢がはじまり脱水症状をひき起こします。感染猫との接触だけでなく、感染猫の便や尿、嘔吐物で汚染された物、またノミなどの外部寄生虫によっても拡散されます。

クラミジア感染症
 猫のクラミジア感染症の主な症状は粘着性の目やにを伴う慢性持続性の結膜炎です。また、鼻汁やくしゃみ、咳などがあらわれ、ときに気管炎、肺炎などを併発し、重症になった場合には 死亡してしまうこともあります。感染経路は感染猫との接触によるものです。
猫カリシウイルス感染症(FCV)

 猫のカリシウイルスによる病気で、猫のインフルエンザとも呼ばれているものです。かかり始じめは、クシャミ、鼻ミズ、咳、発熱といった鼻気管炎と大変よく似た症状がみられます。さらに症状が進むと、舌や口の周辺に潰瘍ができます。2次感染がおきると肺炎を併発して死 ぬこともある病気です。猫のカリシウイルスは感染猫との直接の接触で伝播しますが、クシャミの飛沫による拡散や、手、衣服、食器など間接的な媒介物による伝播も感染経路です。

Cats
猫白血病ウイルス感染症(FeLV)

 オンコウイルス(レトロウイルスの一種)によって引き起こされます。名前の通り白血病の原因となったり、この他にも免疫力が低下し、流産や腎臓病、リンパ腫などのいろいろな病気の原因にもなる恐ろしい病気のひとつです。特に生後間もない子猫が感染すると発病しやすく死亡率も高い病気です。

ワクチン接種で予防できない病気

Cats

 ワクチン接種では防ぐことができない猫の病気のうち以下の2つをとりあげました。これら2つの伝染病の感染は、血液検査で調べることができますが、いずれも発症すると致死率の高い伝染病です。早期に発見し治療することで、よい状態を長く保つことができる場合もありますが、残念ながら完治はしません。これらの病気から、少しでも感染を回避するためには、感染の恐れがある他の猫との接触を避け、室内で育てることしかありません。いずれの病気も最初は元気がなくなる、食欲が落ちる、発熱など何らかの異常がみられますので、病気の早期発見に努めてください。

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)

 一般に猫エイズと呼ばれる病気ですが、人のエイズとは全く異なる別の病気で、猫のエイズウイルスが人や他の動物に感染することはありません。猫エイズウイルスに感染し、病気が発症 し免疫不全をおこして初めて猫エイズとなります。このウイルスに感染していても発症していない猫もおり、無症状キャリアと呼んで区別しています。感染は猫どうしの接触によるもので、ケンカなどでの咬み傷から感染する場合がほとんどです。

猫伝染性腹膜炎(FIP)

 コロナウイルスが原因によって引き起こされる病気ですが、猫に感染するコロナウイルスにはいくつかの種類があり、猫伝染性腹膜炎を起こすものと陽炎を起こす陽炎性コロナウイルスが あります。感染力はあまり強くありませんが、初期の症状には食欲がなくなったり発熱がみられたりします。重症になると腹水や胸水、黄疸の症状がでたり、他の臓器もおかされ、様々な 症状も発現します。

ワクチン接種は、健康状態や免疫力を考えて実施しなければいけません。
接種するワクチンの種類、時期は動物病院で十分に相談してください。