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猫チャンのおしっこチェックしてますか

猫チャンのおしっこチェックしてますか?~猫下部尿路疾患(FLUTD)について~

秋から冬へとだんだん気温が下がってくると、猫がかかりやすい病気があるのをご存知ですか?寒くなって運動量が減り、またお水を飲む量が減ることによって起こりやすくなる病気、そう、膀胱炎や尿石症です。膀胱から尿道と、尿路の下部(出口に近いほう)で起こる病気を総称して下部尿路疾患(FLUTD)といいますが、このような泌尿器系疾患は猫がかかりやすい病気として腎臓病の次に多くみられる病気です。
 「そんなに起こりやすい病気をどうしたらみ付けられるの?!」という方。日ごろの愛猫の行動パターンを把握し、そしてトイレ掃除の際にウンチだけでなくおしっこについてもしっかりチェックしていれば、早くその異常に気付くことができます。思い当たることがあったら、早めに動物病院へ行きましょう。

予防はできるの?

FLUTDを引き起こす原因として、食事内容や年齢、肥満に加え、水分摂取量の不足や運動不足など、さまざまなものが考えられます。尿結晶や尿石には数種類ありますが、猫ではス卜ルバイトとシュウ酸カルシウムがもっとも多くみられます(右図)。
 これらの尿石ができる原因は異なるうえ、原因がよくわからないこともあります。そのため、飼い主であるあなたができる予防法としては、次のようなことがあげられます。


予防のために気をつけること
適切な食事管理

●マグネシウムやカルシウムなどのミネラルを制限した食事。また、尿のpH(ぺーハー)を調整するよう考慮された食事を与えましょう。

水分を十分に与える

●水分の摂取量が少ないと尿の量が少なく、尿が濃縮されて結晶ができやすくなるので、できるだけ水を飲ませ尿を薄めるようにしましょう。
●いつでも、十分飲めるようにするには
 お水をお気に入りの場所におく
 お水を数カ所におく
 お水をトイレの隣におくのは避ける
 缶詰フードにする……缶詰フードはドライフードよりも水分量が多いので摂取する水分の量が増えます。

きれいなトイレ

●猫はトイレが汚れていると排尿をがまんすることがあります。がまんすると膀胱に尿が留まる時闇が長くなり、尿結晶や刺激物貿が膀胱内に作られやすくなります。
 猫はとてもきれい好きです。おしっこを我慢させないようトイレはいつも清潔にしておきましょう。

猫でよくみられる尿石
ストルバイト
[結晶]
結晶
[尿石]
尿石
アルカリ性のおしっこでできやすい。
シュウ酸カルシウム
[結晶]
結晶
[尿石]
尿石
酸性のおしっこでできやすい。
どうやって治療するの?

 予防を心がけていても、FLUTDになってしまうことは考えられます。
 動物病院では、尿やレントゲン検査などにより、尿石の種類や大きさ、数などを調べ、尿路の炎症や損傷の程度を判断してFLUTDの診断を行います。
 尿路の閉塞があればそれを解除し、必要があれば尿毒症の治療を開始します。また、尿道に損傷などがある場合は尿路変更の手術が必要になる場合もあります。
 幸いにも排尿できている場合、膀胱に炎症があればその炎症を抑える薬の服用が必要です。また尿石の種類によっても治療法は異なります。
 猫でもっとも多くみられるストルバイト尿石の場合は、食事中のマグネシウムを低くし、尿を酸性化することで溶かすことができます。これは、食事を治療の一環として動物病院で処方される特別療法食(ヒルズs/d)に切り替えることで可能となります。
シュウ酸カルシウム尿石の場合は、残念ながら食事管理などの内科的治療では溶かすことはできませんので、手術によって尿石を取り出すこととなります。

このように病態に合った治療により、尿石がなくなり、症状も回復したとしても、治療前と同じ食事、環境に戻ってしまったら、再発しやすいのもFLUTDの特徴です。特にス卜ルバイト尿石の原因は主に食事からくるため、適切な食事(ヒルズc/d)を続けないと再発率は70%以上といわれています。

再発を予防するためにできること

 せっかく治ったら、もう同じ病気に罹らせたくないのは誰でもが思うこと。そのためには、治った後も予防で述ベた1~3を心がけましょう。
 特に、食事管理は大切です。予防・再発予防には動物病院で処方される特別療法食が最適です。今まで「猫が好きなもの、食ベてくれるもの」をあげていたあなたも、この機会に食事を見直してみてはいかがでしょうか。
 定期的に獣医さんと相談しながら、最適な食事管理を続けて健康を維持するように心がけていきましょう。
 人間と同様、猫にとっても食事は生活の基本です。日ごろから質の良いフードで病気の予防に努め、万が一病気にかかったときには、動物病院の指示にしたがった食事を与えましょう。あなたの愛猫が健やかに長生きするための、まず第一歩です。

チェックリスト

以下の項目で、骸当する箇所をチェックしてみましょう。

□おしっこがピンク色、もしくは赤色になっている。
□トイレでじっとしていても、なかなかおしっこが出てこない。
□トイレに行く回数が多くなる。
□トイレでないところでおしっこをしてしまう。
□落ち着きがなくなる
□食欲、元気がない。

⇒ひとつでも思い当たることがあったら、早めに動物病院へ