健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

歯の健康について

口腔内疾患について 歯の健康管理

あなたの愛犬・愛猫にこのような様子はありませんか?

 
 
1 口の中のにおいが気になる、くさい。
 
2 食べたそうにしているのに(口の中が痛いようで)食べにくそうにしている。食べない
 
 
 

口の中(歯や歯肉、舌、など)で発生する様々な病気を総称して、「口腔内疾患(こうくうないしっかん)」とよんでいます。あなたの愛犬や愛猫に顔を近づけた時、口のにおいが気になったことはありませんか?

また、お腹が空いているはずなのに食べようとしなかったり、食べたそうにしているのに(口の中が痛いようで)食べられない、食べにくそうにしている、フードを口に入れるのに口から落としてしまう、といった様子はありませんか?

もし、「そういえば・・・」と思い当たるようなことがあるのなら、この「口腔内疾患」とよばれる口の中の病気が進行しているのかもしれません。
今回は口腔内疾患のなかでも一番身近な、「歯」の健康管理についてお話をしましょう。

歯周病って何?

歯周病は、歯肉炎、歯周炎などの総称です。歯を支えている歯肉、歯根膜、歯槽骨、セメント質などの歯周組織が炎症を起こし、破壊されてしまいます。進行すると歯が抜けてしまうこともあります。

歯垢と歯石

食べ物のかすと細菌が結びついて、歯の表面に付着するのが歯垢で、その歯垢が石灰化したのが歯石です。歯垢や歯石をほうっておくと、歯石の上に歯垢がさらにつき、それが石灰化してだんだんと大きくなっていきます。歯石がつくと土台である歯槽骨が吸収され、歯が剥き出しになり、やがて抜けてしまいます。

このような状態の時に、歯石は細菌の巣となっています。 犬や猫は、人間のように歯が痛いとは訴えられません。また、食事を食べていても、本当は大変痛い思いをしているかもしれません。歯垢がつく原因としては、加齢によるもの、唾液が少ない、口の中が粘ついている、食べ物の種類、歯並びなどが挙げられます。

歯垢は歯磨きなどで落とせますが、歯石を落とす場合には、動物病院で次のページで紹介しているスケーリング(歯垢・歯石を取り除く処置)をする必要があります。歯周病が重症になると、細菌が歯の組織、歯槽骨を溶かしてしまい、膿が皮膚を破って目の下などから排出されたりすることもあります。歯垢がつかないように日頃から歯磨きをするか、歯磨きがどうしても無理な場合は、歯垢の付着しにくいフードなどを与えるようにしましょう。

健康な歯を守るには

歯をいい状態に保つには、犬でも猫でも幼い頃からの健康管理が大切です。

永久歯が生える前に、歯磨きに慣れさせたり、口の中を触らせるように育てることは、犬の場合も猫の場合も大切です。 手間のかからない子に育てるには、幼いときに手間をかけることです。

歯の数は、犬の場合は大型犬も小型犬も同じで、乳歯は28本、永久歯は42本です。猫の場合は、乳歯が26本、永久歯が30本です。 遺伝や犬種によっては二重に歯がはえたり、乳歯が抜けずにそのまま残ってしまうことや、歯の本数が不足していることもあるので、もし気づいたら獣医師に診てもらってください。

歯のケア(犬の場合)

歯磨きをする場合は、犬専用の歯ブラシか子供用・幼児用の歯ブラシを使ってみましょう。人間用の歯みがき粉は使わず、犬用として用意されているものを用いて、1日1回は行うのが一番です。

大変なようですが、子犬の時から習慣づければ、犬もできるようになります。 歯磨きができない場合は、ガーゼで歯の表面を優しくこすってあげても歯垢は取れます。また、歯垢の付着を減少させるフードやグッズがありますので、それを利用することもよいでしょう。

歯磨きをしたり、口の中の衛生状態をチェックするためには、愛犬の口を触ったり、中をのぞけなければなりません。

しかし、慣れていな いワンちゃんだと、口を開けたり歯を触ったりすると大変嫌がりますので、触られるのが嫌な犬の場合は、まず優しく声をかけ、リラックスさせながら体全体をなでてあげます。触られて気持ちがいい場所を触ってあげながら、徐々に顔をなでるようにします。マズルをなでられるのが

嫌がらなくなったら、他の顔の部分と一緒に口の周囲を触ったりし、徐々に慣れさせていきましょう。

口をさわれるようになったら、次に口を手で開けて、中の歯をのぞきます。歯を見せてくれたら、思いっきり誉めてあげてください。そして、少しずつ歯を触れるようにしていきます。愛犬の口の中をのぞいたり、触れるようになると、歯みがきだけでなく、薬を飲ませる時にも役立ちます。

歯のケア(ネコの場合)

歯磨きができれば、口を開けて中をのぞくこともできますので、錠剤を飲ませたり、口内炎などのチェックも可能になります。猫の歯磨きの場合も頭を軽くささえて優しく磨いてあげます。磨き終わったら必ずほめてあげましょう。

猫も犬も人間用の歯磨き粉は使わず、専用のものを使用してください。ブラシを使えない時は、ガーゼで歯の表面を優しくこすれば歯垢はとれます。 歯磨きをすることで、猫に歯の痛みがある時はわかりやすくなり、歯頚部吸収病巣という猫によくみられる病気も早期に見つけることができます。

加齢や病気によって口の中や歯が衰えてしまわないように、歯磨きや、時々口の中をのぞいてみてあげるなどして、口の中の健康管理もしてあげましょう。

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