健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

歯の病気

ペットの長寿化が進む中、大好きなペットと一日でも長く暮らすために知っておきたい医学知識を解説するこのコーナー。第2回目の今回は、いつまでも健康で丈夫な歯を保つための特集です。

まず、ペットの歯をチェックする上でどうしても重要なことがあります。それは

Check!
  • あなたは愛犬や愛猫の口を大きく開けることができますか?
  • あなたは愛犬や愛猫の口の中や歯の様子を見たことがありますか?
  • あなたは愛犬や愛猫の歯の数を数えたことがありますか?
  • あなたは愛犬や愛猫の口の中に自分の指を入れることができますか?

人間のお母さんが赤ちゃんと接するように、犬や猫たちにもスキンシップやコミュニケーションが必要です。これは歯に限ったことではありませんが、とても大事なことです。日頃から口を開けたり、歯を触ったりして慣れさせておきましょう。

1 歯(口腔内)の病気

犬や猫の口の中では、色々な病気がみられます。

口内炎、歯肉炎、虫歯、腫瘍、不正咬合、根尖腫瘍(こんせんのうよう・歯の根の部分に膿がたまる病気)、歯周炎などです。

ここでは特に歯周炎について解説します。

歯周炎といってもなかなかなじみのない言葉ですが、犬や猫がかかる口の中の病気としては最も感染頻度の高いものです。

そのまま放置しておくと口が極端に臭くなる、歯が抜けるといった症状が表れます。さらにひどい場合には顎が溶けてしまったりすることもあります。

この病気の恐い点は心臓病や腎臓病の原因にもなるということです。また、食物の消化不良になり胃や腸といった消化器系の病気を発病することも少なくありません。

2 歯石のついていないきれいな歯が理想

歯周病の原因としては歯石と歯垢が一番にあげられます。

愛犬や愛猫の口を開けて覗いてみてください。歯の根元や表面が黄色くなっていたり、灰褐色の物質がついていたりしていませんか?もしついていたならそれが歯石・歯垢とよばれるもので、歯周病の主なる原因となるものです。

歯石のついていないきれいな歯

では,歯石・歯垢はどのようにしてつくられるのでしょうか。

まず始めにタンパク質の膜(食物)が歯の表面につき、そこで細菌が繁殖して歯垢(プラーク)を作ります。歯磨き粉のコマーシャル等で『プラーク・コントロール』という言葉をよく耳にしますが、これは犬や猫にとっても大事なことです。

この歯垢がつき始めの段階なら、まだ歯を磨くことでかなりの予防ができます。しかし、歯垢がどんどんたまってくると、そこに唾液中のカルシウム分が沈着してph(ペーハー)が変化しカルシウムやリンが沈着して歯石となるのです。こうなると、歯磨き程度で取り除くことはできません。なるべく早い時期に獣医師に相談してください。

3 歯石・歯垢の予防とは

ガーゼを用いた歯磨き 歯ブラシを用いた歯磨き

歯石・歯垢は予防しなければ必ず付着します。

飼い主さんが家庭でできる予防策としては、歯垢がつかないように歯磨きをしてあげることです。

これも人間と同じに一番良いのは、毎食後に根気よく歯磨きを続けて行うことです。成犬・成猫であれば毎日の習慣として、短時間のブラッシングから始めるようにして下さい。子犬・子猫であればしつけとして食後の歯磨きを習慣づけてください。

歯磨きの方法としては、小型の軟毛性の歯ブラシを頬と歯肉の間に入れ、歯に対して45度くらいの斜めの角度にあてて前後にブラッシングします。特に歯と歯肉との境界を丁寧に磨いて下さい。

歯磨きでのブラッシング以外の方法として、硬い食べ物を食べさせたりチューインガムを噛ませるなどの方法もあります。

しかしこれらの方法は「歯垢をつきにくくする」というだけで、歯石を完全に除去する方法ではありません。

あなたの愛犬や愛猫の歯をよく見て、歯石が付着しているようであれば獣医師に相談して下さい。