健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

しっぽのフシギ

人間にはなくて、犬や猫にはあるものはなんでしょう? それは尻尾(しっぽ)です。ブンブンと左右に振ったり、ピンと上に伸ばしたり、お腹の中に隠したりと犬や猫の喜怒哀楽を表現するのに大切な体の一部。また、体のバランスを取るのに使われたり、ときには子犬や子猫をあやす道具となったりと様々な役割があるしっぽ。今回は愛嬌いっぱいのしっぽのフシギにせまってみましょう。

しっぽの形あれこれ 犬のしっぽ
巻尾

背中にくるっと巻かれている尻尾です。右巻き、左巻きがあります。秋田犬が代表的ですね。
鎌尾
巻尾ほど巻かれておらず、お尻の上で鎌のように曲がっている尻尾です。
差し尾
鎌尾よりも体に近い部分で前方に傾斜した尻尾で、紀州犬が代表的です。


垂れ尾
特別なカーブなどは無く、自然に垂れ下がっている状態の尻尾。セントバーナードやシベリアン・ハスキーなどに見られます。
フラッグテイル

尾の裏側に飾り毛が多く、尾を水平にすると三角旗に見えるもの。アイリッシュセッターなどに見られます。

オッターテイル

『カワウソ:Otter(オッター)』の尻尾に似ているもので、尾根部が太く先細りになり、厚くて短い毛皮状の被毛が密生しています。ラブラドールレトリバーに見られます。

サーベル尾
垂れ下がっていますが、その途中でサーベルの刀身のようにカーブを描いている尻尾。ブルマスティフなどに見られます。

スクリューテイル

短くクルっと巻いていたり曲がっている尻尾。パグやボストンテリアなどに見られます。

ボブテイル
生まれつき、または断尾手術によって尾が非常に短いか、もしくは無いもの。オールドイングリッシュシープドック、ウェルシュコーギーなど。

この他にもまだまだ多くの種類があります。また、ひとつの形にあてはまらず、アレとコレが混ざった感じという場合もありますよ。あなたの愛犬はどんな尻尾の形をしていますか?

知ってなるほどワンニャフル

 犬の尻尾を生後間もないころに手術によって切除することを断尾といいます。断尾の目的は狩猟犬が尻尾を振ることで音を立て、それによって獲物を逃がすことがないように、また林立する樹木で尻尾を傷つけることがないようにといった理由で行われていたり、昔のイギリスで家畜商の犬に税が課せられていて、納税証明書代わりに犬の尻尾を切り取っていたということが由来であったことが、現在まで続いていることになります。また、純粋に審美的な理由で行われていることもあります。

 もともと尻尾がない場合なら愛らしいだけで済むのですが、単なる審美的な目的で本来あるべき健康な尻尾を切り取るということは動物愛護の問題から現在も議論され続けています。

猫のしっぽ

猫は犬ほどには品種改良されていないためか、しっぽについての名称は少なく、長さや尾の折れ曲がりがあるかどうかで区別されています。まずは長短から見てみましょう。

短尾

5~7cm程度。

中尾

10~15cm程度。

長尾

25~30cm程度。

無尾

生まれつき尾が無いものです。マンクスに見られます。

かぎ尾

猫の尻尾はすんなりとしていて、まっすぐなものが多いのですが、中には尻尾を作っている尾椎が変形して曲がっているものもあります。別名、尻尾曲がりとも呼ばれています。

ジャパニーズボブテイル

短尾でかぎ尾の日本猫はこう呼ばれ、お尻の上にくるっと曲がってついている尻尾が特徴です。

ホイップテイル

長くて先細りになっている尻尾です。アビシニアン、シャムなどに見られます。

ブラッシュ

長毛種のふさふさした毛の尻尾です。
ペルシャ猫などに見られます。

愛猫のしっぽの長さは何cm?
メジャーを持って測ってみませんか。その時にそっと優しく尻尾を触ってみると、かぎ尾かどうかもわかりますね。かぎ尾は日本の猫に結構多いものなので、一度チェックされると新しい発見があるかもしれませんよ?!
しっぽの動きで感情を知ろう!猫の場合

猫は一見無表情、何を考えているかわからない、という人もいるかもしれませんが、実際に暮らしてみるとしっぽで感情が手に取るようにわかります。猫にはおしゃべりな子と無口な子がいますが、どの子のしっぽも大変おしゃべりですよ。

←尻尾をピーンとあげて肛門が見えるような状態で近寄ってくるのは甘えている様子。うれしい時にも見られます。

尻尾がぶわっと膨らんでいるのは、毛を逆立てているため。怖い目にあった時や相手を威嚇する時に自分を大きく見せようとしています。

および腰で尻尾を足の間にたくし込む姿勢は、自分の体を小さく見せようとする時です。威嚇のし合いで負けているときなどの状態です。

家の中やテリトリーの中で尻尾の先を左右に少しだけちょこちょこと動かしているのは、何か少しだけ興味があるものがあった時などです。飼い主に呼びかけられた時に寝ながら「な~に」と反応することも。

尻尾を左右にバタンバタンと大きく振るときはちょっとイライラしている時。何か要求があるのかもしれませんね。

犬の場合

犬や猫のしっぽは感情表現がとっても豊か。顔が無表情な子も、しっぽをみればどんな気持ちかわかるかも。犬の場合、基本はリラックス、尻尾には特別な力を入れていません。巻尾の子は背中にちょこんと、垂れ尾の子はだらーんとしています。

犬はうれしい時にはブンブンと力強く尻尾を左右に振ります。尻尾の左右の動きの強さは犬の感情の大きさと比例しています。尻尾を大きく振りながら出迎えてくれると人間の方もとってもうれしいですよね。でも、この尻尾の動き、実は興奮している時にも見られます。見知らぬ犬に触る時には全体の様子をみて、うれしがっているのか、混乱して興奮しているのかどうかを確認しましょう。

見知らぬ人に会った時、また獲物を見つけたような時、犬の尻尾は地面と水平状態になります。この時は口をきりっと結んで、耳も前方に向けて立っています。何を警 戒しているのかな?

『攻撃するぞ~』という時は体全体が前に向かっています。ついでに尻尾もピンと立ち、腰や背中の毛も逆立っています。この時に不用意に手を出すと噛まれることも。

『怖いよ~』という時は体位を低くして、尻尾を足の間にたくし込みます。喧嘩で負けてしまったときなどに尻尾を隠し、体を小さく見せることで、もう攻撃しないでくださいという合図になりますね。無理に触ろうとすると怖がるあまりに、噛まれてしまうことも。

先生教えて! Q&A

Q.犬のしっぽの先がとがっているのは何故ですか?

A.犬の尻尾は尾骨(尾椎ともいいます)という小さな骨がいくつも集まって構成されています。この尾骨は全部で20~24個あると言われて、図のように先端に行くほど段々細くなって行きます。そのため、お尻の近くにある骨は割りと太<、また、先端の骨ほど細くなっているので、尻尾の先を触ったときに尖ったように感じられるのです。また、断尾を行っている犬の場合には、尾の途中で切断されているため、先端は尖っていず、わりと太く感じられます。

Q.犬はしっぽを切るという話をよく聞くのですが、猫では切るという話を聞いたことがありません。その理由は?

A.犬は狩猟や家畜を追うといった仕事のため、また見栄えを考慮して、などなどの理由で犬種によっては断尾と言う習慣が残ってしまっているので尻尾を切ってしまうことがあります。しかし、猫ではそういう実用面や審美面から尻尾を切るという習慣がありませんでした。そのため、猫では尻尾を切るということが一般的ではないのです。でも断尾をしない犬種でも、猫でも尻尾に腫瘍ができてしまったときには尻尾を切ってしまうこともあります。尻尾を切ってしまっても日常生活上の問題はないようです。