顔の中央に位置する鼻は、「においを嗅ぎとる」という嗅覚の役割以外にも大切な役目を果たしています。目で見える部分だけでなく、鼻の穴もググッとのぞいて色々な不思議を見てみましょう。
においは生物の感覚のなかで最も原始的なものとされ、生殖など生命の維持とも関係の深い感覚とされています。異性を惹きつけるフェロモンなどがその代表的な例ですね。においは嗅上皮(きゅうじようひ)と呼ばれる細胞のみが、感じることができます。 | |
鼻の穴の奥は複雑な形をしていて、粘膜上皮(粘膜をつくる細胞)に覆われています。外の空気は鼻のなかを通るうちに加温加湿され、暖かく湿ったものとなり、気管や肺に与える刺激を減らしてくれています。 | |
空気の中には、様々なウイルスや細菌、ホコリ、花粉などといったとても細かい異物が多く含まれています。鼻はこれらの異物と最初に接触し、この異物を鼻粘膜の細かな毛をもった細胞に吸着させた後、綿毛運動によって鼻の外へと運びだします。また、鼻粘膜にある白血球やリンパ組織は、異物を取り除く働きもしています。鼻粘膜は、異物と生体が戦う場所ともいえるのです。 |
鼻のお手入れは、病気にかかってしまったとき以外は特に必要としません。鼻がカサカサになっている、ひび割れているといった状態は、なんらかの病気の可能性がありますので動物病院にご相談ください。
鼻水は通常は無色透明で少しだけ粘り気があるくらいが正常です。鼻水の色がいつもと違う、鼻水に色がついているという場合には、細菌やウイルスに感染している可能性が考えられますので、動物病院ヘご相談ください。
鼻の粘膜上皮は、香りの分子をキャッチして嗅上皮ヘ送る役割も持っています。そのため、この面積が多いほど、嗅覚は鋭くなります。粘膜上皮の面積を人間と比較してみると、犬は6~40倍、猫は5~7倍の広さを持っています。このため、犬は人間の100万倍、猫は数万から数十万倍の嗅覚を持っていることになります。つまり、人間・犬・猫のなかでの嗅覚チャンピオンは犬ということですね!
ただし、犬でもパグやブルドッグなどの短頭種は、鼻の長さが短いために他の犬種と比較すると嗅覚は鈍いと考えられます。逆に狩猟犬と呼ぱれるダックス、セッターなどは嗅覚の働きが重要なので鼻が長いのです。
犬や猫の鼻は起きている時は通常しっとりと湿っています。これは、鼻孔の内側にある特殊な細胞(腺細胞)から分泌される液体が、じわじわと鼻の表面にまで昇ってくることによると考えられています。この腺細胞から分泌される液は、犬は水のようで、猫はもうすこし粘っこいようです。興奮したり、緊張している猫は、鼻の下半分までこの分泌液が昇ってきていることがあります。眠っているときや、眠いときなどは分泌される液を作る活動が低下するために、乾いた感じになってしまいます。乾いている=病気ではないのでご安心くださいね。
鼻の頭の色は個体によって様々です。鼻も皮膚の一部なので、色素を作る細胞があるかどうか、また色素をどれだけ作っているかによって変わってきます。生まれつきピンク色の鼻をしている子や黒色の子、また、少しだけ斑があるような子もいますね。
成長するにつれて色が変わってくるのは、遺伝的な要因、食事や日光にどれだけ当たっているかなどといった環境要因などの影響を受けるためです。ただし、病気によっても色が抜けたり、色素沈着が起こることもあります。
鼻が短いという犬種、猫種はいます。犬の場合ではこれらを短頭種と呼んでいます。鼻が短い犬種で代表的なものがパグやブルドック、猫種ではペルシャやチンチラなどがこ部類に入ります。これらは長年の交配の結果、鼻が短いもの、つぶれているものが良いとされ犬種、猫種として固定されたものなのです。
犬は空気の流れのなかで気になるにおい分子をキャッチすると、そのにおいがどこから流れてきているのかを確かめるために、鼻孔を広げてより大量の空気を吸い込もうとします。それが、鼻をくんくんと動かしている状態になります。それだけ犬や猫は、五感なかでも嗅覚が敏感なのでしょうね。
鼻はもともと呼吸をするための器官です。乾いた空気を吸い込むときには、その空気を温め湿らせます。反対に、息を吐き出すときには、肺で温まって湿った空気が鼻を通り、鼻の内部を潤します。つまりは鼻で行う呼吸が、体のためには大変合理的なのです。猫が口で呼吸をする場合は、鼻からの呼吸がよほど難しい場合に限ります。人間も口から呼吸するよりも鼻で呼吸をした方が、喉や肺ためにはとてもいいのですよ。