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人獣共通感染症 Zoonosis
ズーノーシスを知っておきましょう Part1

Zoonosis ズーノーシスを知っておきましょう Part1

ズーノーシス[Zoonosis]

最近、テレビや新聞などでもよく耳にする言葉だと思います。どんな意味だと思われますか?人獣共通感染症「ズーノーシス」とは、人間と動物の両方に感染し、どちらにも病気を発症させる感染症のことをいいます。

しかし、このお話をするのは「動物は病気を持っているので危険だ」とか「汚くて不潔だから気をつけよう」ということをお伝えするためではありません。

ペピイの読者の皆さんをはじめ現在では多くの方が、愛犬・愛猫たちを家族の一員として、またパートナーとして一緒に暮らしている方が多くおられます。そんな愛犬や愛猫たちとの楽しい生活を守り、安心して快適に過ごしていくために、人獣共通感染症についての正しい知識と予防方法をお持ちになってください。

では、「人獣共通感染症」には、どんな病気があるのでしようか?

今回は主に犬・猫・小鳥に関係するものを紹介しましょう。

幼虫移行症

本来動物に寄生している寄生虫(回虫や鈎虫など)の卵や幼虫が、人間の体内に入り、幼虫が人の体の中を動くことによって起こるさまざまな症状を幼虫移行症といいます。

多くの場合、食べ物などを介して口から感染(軽口感染)します。虫卵で汚染されている野菜を生のまま、あるいは十分に加熱しないで食べた場合や、汚染された土や砂、水との接触などが感染経路となります。幼虫の侵入する場所は眼球、肝臓、脳などに及ぶこともあり、深刻な症状が出ることがあるため注意が必要です。

子供への感染が多くみられますので、犬と遊んだり触った後や砂遊びをした後、食事の前には必ず手洗いを励行させてください。また、犬や猫の便も速やかに片づけましょう。そして、犬や猫を飼われている方は、動物病院で定期的に検便をしてもらい、寄生虫がいるようなら駆虫をしてもらってください。

狂犬病

国内では昭和30年代のはじめより発生は認められておりませんが、犬や猫も含めて現在の日本で最も重要視されている人獣共通感染症です。世界保健機関(WHO)によると、全世界で毎年3万5千人~5万人もの人が狂犬病によって死亡しており、日々多くの種類の動物が輸入されている現在では日本国内でもいつ再発生するかわかならい状況なのです。

お隣の韓国でも撲滅したはずの狂犬病により1999年に人の死亡例が報告されています。毎年、狂犬病の予防注射は必ず接種しておいてください。

レプトスピラ症

レプトスピラという細菌の感染により発熱や頭痛、結膜炎、血尿などの症状がみられる感染症です。重症になると黄疸や腎臓障害などの症状もでます。人間や犬のほか、牛、馬、豚などの家畜も感染しますが、特にねずみが最大の感染媒体とされています。感染した動物の尿の中には、大量の菌が含まれていて、それが感染源となります。

人への感染はレプトスピラ菌を合んだ感染動物の尿に汚染された土壌や水との接触により皮膚の傷、鼻や目の粘膜から体内に侵入します。犬の場合も汚染された水を舐めたり、土に触れることによって感染します。症状には黄疸出血型とカニコーラ型の2タイプがあり、黄疸出血型では、黄疸の他に嘔吐、下痢、歯茎からの出血、血便などがみられます。カニコーラ型は嘔吐、下痢による脱水症状、体温の低下などがあり、手当が遅れると尿毒症を起こし死に至ります。

犬はワクチン接種で予防することができますので忘れずに予防しておきましょう。

トキソプラズマ症

トキソプラズマ症は寄生原虫のトキソプラズマが原因でおこる病気で、妊娠中の胎児に影響を与えることから、注意を要する感染症とされています。妊娠する可能性があるのであれば事前にトキソプラズマの検査(血液検査)をしておき、もし抗体陰性(まだトキソプラズマにかかっていない)という結果が出たら、妊娠期間中の女性は特に感染には注意が必要です。

生肉(豚肉)は素手で触らない、飼い猫には生肉を食べさせない、猫の便は絶対に素手で触らずに速やかに片づける、ガーデニングなどで土を触った時や、食事の前には必ず手を洗う、などが予防には効果的です。

猫引っ掻き病

名前の通り猫(特に子猫)や犬に引っかかれたり、噛まれたりした傷口から感染しリンパ腺が赤く腫れ上がったり発熱し膿瘍になったりします。外傷の消毒や保菌動物に寄生しているノミが健康な犬や猫に寄生することで感染するため、猫にノミの寄生が見られるようなら、駆除と予防が一般的な対応法とされています。猫の爪も伸ばしたままにせず、切っておくことも予防法のひとつです。

サルモネラ腸炎

下痢や嘔吐など食中毒の原因として有名なサルモネラ菌による感染症です。食中毒としては肉や卵からの感染が重要視されています。家畜(ニワトリ、牛、豚など)や、犬や猫などのペット、亀、爬虫類(ヘビ、トカゲなど)も感染源となります。保菌動物は消化管内にこの菌を持ち、糞便とともに菌が排出されます。

症状としては、腹痛・下痢・嘔吐・発熱などで、予防は「手洗い」と、調理の際に十分に加熱する、ネズミ、ハエ、ゴキブリなどの駆除を行う、などが効果的です。

オウム病

「オウム病クラミジア」を病原体とし、鳥から鳥ヘと感染を繰り返し、オウムやインコ、ハト、ブンチョウ、ジュウシマツなど広い範囲で感染します。鳥類以外でも犬や猫、牛、豚などの家畜、両生類、魚介類なども感染を受けます。人間への感染は、ペットとして飼われている小鳥が感染源となる場合が多く、病原体に汚染された鳥の羽毛や飛散した排泄物を吸い込むことで感染し、発熱や頭痛、筋肉痢痛、食欲不振などの症状があらわれます。鳥かごなど飼育環境を清潔に保つことが有効な予防方法です。

エキノコックス症

エキノコックスは多包条虫といわれる主にキツネに寄生するサナダムシの仲間です。キツネや犬はこの多包条虫に寄生されてもほとんど症状には出ることはありません。多包条虫の卵を人間が食物や水を介してロに入れたり飲み込んでしまうと、腸の中で孵化して肝臓や肺などで包虫を作りこれらの臓器を侵したり圧迫させて機能不全を引き起こします。感染率は他の病気に比べ高くありませんが、感染してから自覚症状が出るまでに数年から10数年かかることもあり、気がつかないうちに悪化してしまうことが多い病気です。

予防法としては、エキノコックスの卵が口に入らないようにすることが重要ですので、安易に野生動物(特にキタキツネ)には触らない、触ってしまった後は手を洗う、生水や山菜・果実などをそのままロにしない、などが予防には効果があります。

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