『肥満は万病のもと』という言葉はきっと聞き飽きるくらいに聴いているフレーズかもしれませんね。でも、心からそれを実感するのは万病が訪れた時かもしれません…。
何故なら世界中で飼育されている猫の20~40%は肥満であると言われ、この数値は近年増加傾向にあっても減少傾向にはなっていないのです。あなたの愛猫はどうでしょうか?
『体重が重い=肥満』と考えがちですが、科学的には体重が重いからといっても肥満とはなりません。例をあげてみると、筋肉ムキムキの体操選手の体重は同じ身長の人に比べて重いことが多いものですが、それを指して肥満という人はいないのと同じです。
肥満とは『体内の脂肪貯蔵部位(皮下や大網)への過剰な脂肪の蓄積であり、その個体の理想的な生理学的体重を15~20%以上越えるような状態』と定義さされています。つまり、理想的な体重が5kgの猫に皮下脂肪や内臓脂肪がついて、その体重が5.75~6kgとなってしまうと肥満ということになるのです。
「理想的な体重と言われても、うちの子は純血種ではないし…どれくらいが理想体重かわからない」と言われる方もおられるでしょうが、いわゆる平均体重と理想体重は全く異なったものなのです。
純血種の平均体重を見てみると、猫種ごとでも1~2kgのばらつきはあるもの。1~2kgくらい、と思われるかもしれませんが、人間の体重に換算してみると10~20kg以上のばらつきがあることになります。愛猫が純血種で、平均体重の範囲内に含まれているから大丈夫、と安心していても、実は肥満となっている猫がいるかもしれません。
愛猫の骨格で理想的な体重は異なってきます。骨格が大きめならば、当然理想的な体重はそれに応じて猫の平均的な体重よりも重くなりますし、反対に骨格が小さめであるならば、軽くなるということになります。つまり、骨格に応じた過不足のない体重が理想的な体重と言えるのです。
人間と同様に、猫も性成熟を迎えると骨格はあまり成長しなくなります。そのため、成長期を過ぎてから体重が増えるとすれば、それは主に脂肪が増えているから、ということになります。このことを利用して愛猫の理想的な体重を大雑把にではありますが推定することができます。
グラフ用紙を用意し、その横軸に月齢を、縦軸に体重を示して、折れ線グラフを作成してみると、生後8~12ヶ月齢頃に体重がほぼ横ばいとなってくる時期があります。(ただし、小さな頃から肥満傾向にあった場合は、これに当てはまりません…)その時期の体重を理想的な体重の目安とすることができます。
例えば、生後8ヶ月齢に体重が3.4kgで、10ヶ月齢では3.7kg、12ヶ月齢では3.8kgとなっているのであれば、その猫の理想体重は3.4~3.8kgプラスマイナスその10%前後となります。
避妊や去勢を受ける猫の多くが生後8~12ヶ月齢頃に手術を受けているので、その時に動物病院で計測した体重を参考にされるのも良いでしょう。
●資料提供:日本ヒルズ・コルゲート株式会社 |
(痩せすぎ) 理想体重より20%前後少なくなっています。 |
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理想体重より10%前後少なくなっています。 |
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(標準) |
※このような体型の時の体重が猫それぞれの理想体重となります。 |
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(太り気味) 理想体重より10%前後増えています。 |
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(太りすぎ) 理想体重より20%前後増えています。 |
※BCS5までいくと、顔や四肢にも脂肪がついていることがあります。 |
●簡単に言うと、お腹に脂肪がついているか、肋骨の感触があるかどうかが肥満の分かれ目となっています。太りすぎになってしまうと、小走りになった時に脇の下の所までタプタプと波打ってしまうでしょう。
成長し終わってから手元に愛猫がきたということは良くあります。また、元気に成長しているから体重は特に気にしていなかった、ということも。そのような場合であれば、手軽に見た目と触った感じでわかる肥満かそうでないかの判別方法を利用しましよう。
上記の表はボディコンディションスコア(BCS)というもので、「1、猫の姿を真横からと真上から見たときのシルエット」と、「2、体を優しく撫でた時に骨格の突起が感じられるかどうか」を評価していきます。これは5段階に分けられています。これを用いて肥満かそうでないかを評価することもできます。
★これは主観的な評価の仕方なので、もしも体重を減らそう、あるいは増やそうとしているときには毎回同じ人がチェックしていくと、前回との違いがわかりやすくなるでしょう。
BCS1の状態の猫は、明らかに病的な状態であり、その病態に応じた治療・食事療法が必要となります。
BCS2は人間でいうならば、モデルのような体型かもしれません。スリムで見た目はすてきです。でも、猫の健康のために、できることならBCS3の状態を保てるようにしたいものです。
BCS5までいっている猫は以外に少なく、どちらかというと肥満と言われている猫のほとんどがBCS4の状態にあるのではないでしょうか。しかし、後ろを見て安心せずに、前をみて少しずつでも改善したいものです。見過ごしているとBCS4から5への進行は意外に早いかもしれません。またBCS4の状態であっても肥満からくると考えられる障害が見られることは多いものです。できることなら、理想の体型、BCS3を目指しましょう。
愛猫の現在の状況をしっかりと認識し、現実に立ち向かうことこそ減量への道となります。さてさて、あなたの愛猫の体重や体型は理想的?それとも…