"http://www.w3.org/TR/html4/loose.dtd"> 愛猫を守るデンタルケアとは?

健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

愛猫を守るデンタルケアとは?

  • 愛猫を守るデンタルケアとは?
  • 犬猫を守るデンタルケアとは?

昨今、様々なデンタル用品が登場し愛猫のデンタルケアへの関心も高まっていますが、「口を触らせてくれない」「歯磨きなんてとてもムリ!」「そもそもデンタルケアって必要なの?」と困惑する飼い主さんも少なくありません。
今回は、猫のデンタルケアの重要性と家庭でできるケアの方法についてのドクターズアドバイスをお届けします。

歯周病はなぜ怖い?

見えない所で進行している病気

 猫の口内環境は人とは異なり、虫歯がほとんど無いかわりに、人よりずっと歯周病になりやすいという特徴があります。そのため。猫のデンタルケアは歯周病対策が中心となります。
歯周病は、歯だけの病気ではなく、歯と歯肉(歯茎)の隙間(歯周ポケット)で起こる病気です。見えている歯はきれいでも、外から見えない歯肉の中で進行していることもある厄介な病気なのです。獣医師でもレントゲンを撮らないときちんとした診断は難しい場合もあります。

病害が口内だけに留まらない場合も

 歯周病を起こす細菌は歯肉だけに留まりません。歯根部から深部に広がり、炎症が頬に広がったり、顎の骨を溶かしてしまったり、血流に乗って全身に運ばれ心臓や腎臓などの大切な臓器に悪影響を及ぼすことも考えられます。

こんなときは、お口のトラブルかも

猫に多いお口のトラブル

歯周病

猫のお口のトラブルの中でも最も多い疾患。炎症の進み具合によって「歯肉炎」と「歯周炎」に大別されます。

歯肉炎

 初期段階の病状。歯周ポケットに食べかすなどたまり細菌が繁殖し始める。歯は白から黄色、茶色っぽくなり、歯肉は赤く腫れてくる。

歯周炎

 歯肉炎が進行し、歯肉以外にも炎症が及んでいる状態。歯周ポケットが深くなり、細菌はさらに繁殖しバイオフィルム(※)を作りだす。歯肉の赤みと腫れは増し、歯垢や歯石も増え、口臭が感じられるようになる。場合によっては痛みが伴うことも。
(※)バイオフィルム:ぬるぬるした粘膜状の物質、バリアの役割を果たしている。抗生物質などでは破りにくく、薬での治療が困難とされる一因。

歯肉炎,歯周炎

慢性歯肉口内炎

慢性歯肉口内炎

歯肉や口腔粘膜が慢性的に炎症を起こしている病態。口腔内の細菌や感染したウイルスに対する過剰な免疫反応であったり、代謝異常や栄養不足の場合など、その発生原因は様々。歯周病に併発しているケースも少なくありません。

歯頚部吸収病巣しけいぶきゅうしゅうびょうそう

歯頚部吸収病巣

歯肉と歯の境からエナメル質が溶け出して、顎の骨と癒着してしまう猫特有の病気。神経が露出してしまい、かなりの痛みを伴い、食事をとるのも困難に。

「口臭がきつくなった」「ごはんを食べにくそうにしている」などの場合はお口のトラブルに限らず、何らかの疾患を抱えている可能性もあります。
早めに動物病院で診察を受けましょう。

飼い主さんの誤解や思い込みが悪化の原因に・・・!

歯周病を引き起こすのは歯石ではなく歯垢

 「スケーリング(歯石除去)をしているから大丈夫」とお考えの飼い主さんもいらっしゃるようですが、歯の上の歯石を取り除くだけでは歯周病は治りません。なぜなら、歯周病を引き起こしているのは、歯石ではなく歯垢だからです。歯垢は単なる食べかすと思われがちですが、その約70%は細菌です。それが歯周ポケットの中で増殖し、歯周病を引き起こします。
 歯垢が石灰化したものが歯石ですが、その状態では、すでに細菌は死滅しており、歯石自体が悪影響を及ぼすことはありません。ただし、歯石が付着すると歯の表面に凹凸ができて歯垢が付きやすくなり、細菌が繁殖しやすい環境になるので、除去すること自体は大切なことです。

麻酔のリスクより、治療が遅れることの方が危険度は高い

 根本的な歯周病治療では概ね麻酔をかけて行います。中には、麻酔のリスクを必要以上に恐れて、治療をためらう飼い主さんも少なくありません。もちろんリスクはゼロではないので、処置が必要な場合は若くて元気なうちに行った方がいいでしょう。
 しかし、麻酔をするときは事前に検査をして、健康であることを確認してから行いますし、万一、麻酔のかけ始めに体調が悪そうなら中断することもできます。麻酔を恐れすぎて、歯周病の処置を遅らせてしまう事は、愛猫の体にとっての危険度を高めてしまっているとも言えるでしょう。

きちんと予防、きちんと治療することで愛猫を歯周病から守れます

 歯周病はデンタルケアの実践で、ある程度予防できる病気です。
 猫の歯垢は約7日間で歯石に変わります。歯石になってしまうと、歯みがきするだけでは取れなくなります。できれば毎日こまめにお家でデンタルケアをしてあげましょう。
 しかし、歯周病は「見えない所で起こる厄介な病気」です。セルフケアだけでなく定期的な動物病院でのチェックなど、かかりつけの獣医師さんにも十分相談して、適切な処置と正しいデンタルケアで愛猫の健康を守ってあげてください。
※すでに歯周病などの病気になっている場合は、歯磨きすると痛みを感じます。あまりにも嫌がるようでしたら、その可能性もありますので、動物病院で診察してもらい、きちんと診断、治療をしてから歯みがきするようにしましょう。

前のページへ 1/2 次のページへ