健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

症状から見つける猫の病気 「下痢をする」

症状から見つける猫の病気 「下痢をする」

いつもと違うものを与えなかったか、チェックして
食事によるもの

症状から見つける猫の病気 「下痢をする」

日常的に最もよく見られる下痢は、食べ過ぎ、フードを変えた、人用の食べ物を与えたなど、食事によるものです。猫は、小腸での乳糖分解酵素(ラクターゼ)の分泌が少ない乳糖不耐症であることが多く、牛乳や乳製品で下痢になることがあります。食いだめ習慣がないため、犬ほど食べ過ぎはありませんが、肉食動物なので野菜の消化は苦手で、よかれと思ってトッピングした野菜が原因になることもあります。
 下痢をしても、元気で吐き気もなければ一過性のものと考えられ、それほど心配はいりません。思い当たる原因がないか、前日から当日にかけての食事を振り返ってみてください。

物が腐りやすい季節はとくに注意!
細菌感染によるもの

腸炎を起こす細菌は様々ですが、サルモネラ菌やカンピロバクター菌などが主な原因菌です。これらの菌に汚染された食べ物や水を口にすると、腸内で菌が増殖し、腸粘膜にダメージを与えて炎症を引き起こし、下痢や腹痛、時に嘔吐や発熱を伴うこともあります。通常、1週間程度の抗生物質の投与で治まります。
 健康な状態でも約10%の猫は保菌しているといわれ、体力や免疫力が低下していると、とくに汚染された物を口にしなくても発症することがあります。

ワクチン接種での予防が一番の対策
ウイルス感染によるもの

猫には様々なウイルス感染症があり、発熱、下痢、嘔吐、元気消失などの症状を示すものは少なくありませんが、なかでも激しい下痢や血便、嘔吐、高熱を示すのが「猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)」です。血液検査で白血球の極端な減少が見られるのが特徴で、非常に致死率の高い病気です。
 ウイルス感染症に対する特効薬はなく、下痢による脱水を改善するための輸液療法、免疫力を高めるためのインターフェロン投与、細菌による二次感染を防ぐ抗生物質投与など、支持療法や対症療法が中心となります。
 猫汎白血球減少症にはワクチンがあるので、定期的なワクチン接種による予防が最も効果的な対策です。

子猫は重症化しやすいので、必ず駆虫を
寄生虫感染によるもの

回虫、鉤虫(こうちゅう)、瓜実条虫、イソスポラ(コクシジウム)、ジアルジアなど、いわゆる”お腹の虫”の寄生によっても、下痢や栄養不良、貧血などを起こします。とくに子猫は重症化しやすいので、飼い始めたらすぐに動物病院で検査を受けましょう。瓜実条虫以外は、虫卵などを含む感染猫の糞便から、瓜実条虫はノミが媒介します。なお、回虫は母猫からの母乳感染もあり、外出したことのない子猫でも感染していることがあります。駆虫薬の投与で治療します。
※寄生虫は、ペットから人へ感染することもあります。3ヵ月に1回の定期駆虫が推奨されます。

自らの消化酵素で自分を消化してしまう病気
慢性膵炎

膵炎は、本来腸管内に分泌されて働くはずの膵液が、何らかの原因で膵臓内で活性化し、膵臓自体が消化されて炎症を起こす病気です。
 膵炎には急性と慢性があり、急性膵炎では、発熱や激しい腹痛、下痢や嘔吐などが見られ、重症化すると呼吸困難やショック症状を起こし、膵臓が壊死して死に至ることもあります。慢性膵炎は、急性ほど激しくはありませんが、下痢や嘔吐、食欲不振など急性膵炎と似たような症状が続き、次第にやせてきます。長期化すると膵臓が徐々に破壊され、インシュリンが分泌できなくなって、糖尿病を発症することもあります。犬に比べて猫の膵炎は無症状のまま進行していることも多く、見つけにくい病気です。
 膵炎の治療は、症状に応じて輸液療法とともに、制吐剤や鎮痛剤、抗生剤などの投与を行います。また短期間の絶食後に、経腸チューブで栄養補給を行うこともあります。慢性の場合は、低脂肪食の食事療法で症状をコントロールしていきます。

自分の腸を攻撃する原因不明の自己免疫疾患
IBD(炎症性腸疾患

原因不明の慢性的な下痢や嘔吐のなかで、最も多いといわれるのがIBD(炎症性腸疾患)です。これは、自分の免疫で自分の腸を攻撃してしまう病気で、腸粘膜が炎症を起こして栄養分を十分に吸収できなくなります。進行すると、腸粘膜からタンパク質がどんどん漏れ出し、腹水がたまったり低タンパク血症を起こすこともあります。
 原因は明らかではありませんが、遺伝性、食物アレルギー、細菌感染などの複合的な関与が疑われています。IBDは消化器型リンパ腫との識別が難しく、確定診断のためには病理検査が必要です。
 症状が軽ければ、低アレルゲン食による食事療法だけで改善することもありますが、症状が治まらない場合は、食事療法と並行して、ステロイド剤、抗炎症剤、抗生物質などを投与して炎症を抑えます。完治は難しく、食事療法と服薬で様子を見ながら症状をコントロールしていくことになります。

下痢以外に、食欲不振や体重減少に注意して
消化器の腫瘍・消化器型リンパ腫など

胃、腸、肝臓などの消化器系の悪性腫瘍(がん)、消化器型リンパ腫などでも、慢性的な嘔吐、下痢、血便などの症状が見られます。また、悪性腫瘍には共通して、食欲不振、体重減少、元気消失などがサインとして現れるので、愛猫がシニア期になれば、下痢だけに注目せず、全身の様子にも気をつけてください。猫白血球ウイルスに感染している猫はリンパ腫を発症しやすいので、愛猫がキャリアの場合はとくに注意が必要です。
 消化器系の悪性腫瘍はレントゲン検査や血液検査では診断が難しく、超音波検査(エコー)や内視鏡を用いての生検(バイオプシー)が必要になることもあります。治療は、腫瘍の部位や進行度合いなどによって、外科手術、抗がん剤投与、放射線治療などが選択されます。

症状から見つける猫の病気 「下痢をする」
下痢・軟便のときは、便をラップに包んで病院へ持参しましょう。