健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

PEPPYレポート フレー!フレー!動物看護師さん

PEPPYレポート フレー!フレー!動物看護師さん

「飼い主さんから”看護師さん”ではなく、”おねえさん”と呼ばれたことがあります」。ある動物看護師の言葉です。飼い主さんとのなにげないやりとりのあと彼女は、「看護師として認められていない」と感じたそうです。
その日から彼女は、それまで以上に看護師としての技術を磨き、知識を吸収し、努力をかさねました。医療業務のサポートだけでなく、飼い主さんがわが子のことが心配で不安なときに優しく声をかけたり、日頃のお世話やしつけについて熱心にアドバイスしたり、飼い主さんの身近な存在として働きました。そして、ある日、「おなたのような看護師さんなら、安心してうちの子をまかせられるわ」と、あのおなじ飼い主さんから、ひと言。そう、笑顔に満ちたそのセリフの中の肩書きは”おねえさん”から”看護師さん”にかわっていたのです。そのとき彼女は、いまの職業を選んで本当に良かったと思ったそうです。この話からも、飼い主さんが安心して治療をまかせられるようになるには、動物看護師の役割が非常に大切なことに気づかされます。そしていま、「安心してうちの子をまかせられる」動物看護師がひとりでも多く育つために、公的資格化へ向けて獣医療界が動き出しました。

人間の医療現場の、医師と看護師のようになること。

動物看護師という職業が、専門職として確立するように日々、活動を続けている団体があります。日本動物看護職協会が、そうです。会長の太田光明氏に、お話をうかがいました。
「獣医療に本来、求められているのは”チーム獣医療”なんです。つまり、獣医師は獣医師として、動物看護師は動物看護師として、それぞれの職域を明確にし、それぞれの業務を責任とプライドを持って行こう。これはアメリカやイギリス、ドイツ、フランスなどでは、当たり前のことです」。つまり、太田会長が問題視しているのは、日本の獣医療の現場ではあくまで獣医師が中心人物で、動物看護師はお手伝い的な役割といった空気があること。もっと獣医師がかかえている業務を動物看護師にまかせて、おたがいを専門職として認め合いながら仕事をするのが自然な姿である、と。
「人間の医療現場の医師と看護師のように」。太田会長のその言葉に、私たちも強く共感しました。

太田会長

公的資格を持った動物看護師の誕生。飼い主さんのために、夢で終わらせない。

動物看護師を専門職として認められるようにすること。重要な職業という事実を、世の中に広く知らせること。また、人間の医療現場の、医師と看護師のような立場にすること。これらの課題をまとめてクリアする方法がある、と太田会長はおっしゃいます。
「動物看護師の認定試験が、その答えです。いままでも獣医療に関わる各団体が、それぞれの基準で動物看護師を認定していますが、それとは違う獣医療界全体に通用する統一認定試験を毎年、実施します」。この試験に合格して認定動物看護師の資格を取得すると、それが自動的に公的資格になる、というのが太田会長のビジョン。
「いま、なんらかのかたちで獣医療に携わっている看護師、そしてこれから看護師の職に就きたいと思っている人も全員、認定動物看護師になって公的資格を取ってもしい」。もちろんそうなれば。動物看護師がひとつの職業として社会に認められ、また、人間の医療現場の看護師のように、身につけた技術と知識を存分に発揮できるようになるはずです。そしてなにより、動物看護師の公的資格化は、愛する家族をまかせる方の不安を取り除くことにもつながります。

獣医師、動物看護師の活動をこれからも応援してまいります。

日本動物看護職協会

獣医師、飼い主さん、動物。それぞれをつなぐ、心の通訳です。

とことん勉強する。自身を持って話せる。飼い主さんに近づく。

ペピイ  動物看護師として日頃心がけていることはどういうことですか。
中村さん  つねに勉強しないといけない仕事だと思うんです。病院でも学ぶ機会はたくさんありますし、知識や技術を身に付けていく上で、セミナーや認定試験を受けることも大切だと考えています。
ペピイ  では、動物看護師の公的資格化についての意見を聞かせていただけますか。
中村さん  公的資格化へと動いてくださっている方々の気持ちに、きちんと応えたいです。だから、動物看護師統一認定機構の全国統一試験を受けます。でも、試験に合格して認定動物看護師になっても、それは新たな学びの始まり。その先が、大事なんです。10年後の自分に興味があるし、この仕事を長く続けたい。人は継続の中で変わっていくもので、試験という一瞬の出来事では変わらないと思います。
添田さん  「認定」されたからといって、急に能力がアップするわけじゃない。私もそう思います。でも一方で、いくら勤務歴が長くても資格がないと・・・という思いがあることも事実。だからいま、公的資格化という訪れた波を大切にしたい。そんな心境です。
ペピイ  飼い主さんとのコミュニケーションに関してどのような考えをお持ちですか。
中村さん 毎週土曜日の午後に、パピーケアのクラスを開いています。そこでしつけの質問とかをされると、信頼してくださってるのかな、と実感できますし。一度信頼していただくと、日常の変化をすぐに教えてくださり、病院に来ること自体に慣れてもらったり。そうなると、完治への対処が早くなりますよね。
添田さん  普段のセミナーでいくら知識を身につけても、飼い主さんとのコミュニケーションができないとムダになります。どれだけ話せるか、聞いてもらえるか、実行してもらえるか、来てもらえるか、食べさせ続けてもらえるか。知識だけぶつけても、覚えてもらえない。だから飼い主さんによって、コミュニケーションのかたちを変えています。
ペピイ  最後に飼い主さんへのメッセージをお願いします。
中村さん 添田さん ちょっとおかしいなと思ったら、早めに来院してください。それが、すべてです。飼い主さんに癒しをくれる、その子のために。

上田獣医科病院

一生懸命働くと、飼い主さんはちゃんとやりがいをくれる。

ぺピイ 動物看護師として勤務し始めた頃を振り返っていただけますか。
竹本さん  まだ不慣れな私に優しく接してくださる飼い主さんがいて、その方が連れてこられた子を最後まで見届け、見送れたことが、いまでも心の真ん中に残っています。自分なりに精いっぱい看護するということを、変に意識せず自然にできたからかもしれません。
斉藤さん 私の場合、初めて動物を飼った方と出合って、そのとき私も看護師1年生。何もアドバイスすることができなかったんですが、月日が経つにつれてだんだん信頼関係ができてきて、一緒に成長させてもらっているようで、うれしかったことを覚えています。
ペピイ  自分を高めるためにしていることは何ですか。試験を受けるとか。
竹本さん  日本動物看護職協会主催の、臨床栄養指導の認定試験を受けて、ふたりとも2級の資格を持っています。でも、資格を取るのはもちろん大切なことなんですけれど、受験のために勉強するそのプロセスがかなりプラスになっています。
斉藤さん  本当にそうですね。受験セミナーなどで身につけた知識を、自分の中だけにしまっておくのはもったいないので、食事管理のプリントにまとめて、それをもとに説明するようになったことで飼い主さんとの距離が縮まりましたし。
ぺピイ  最近、やりがいを感じたエピソードを紹介していただけますか。
竹本さん  飼い主さんの娘さんが、私たちの働く姿を見て「動物看護師になりたい」と言ってくださったことを知って、とてもうれしかったです。それと、なんとなく話づらかった飼い主さんから「あなたも犬を飼っているの?」と話しかけられたことも。
斉藤さん  出産間近で破水し、助かるかどうかという状態の子が、帝王切開で無事に子どもを生んだときは感動しました。あと、獣医師と飼い主さんの間にいて両者のコミュニケーションを良好にすることが私たちの役割なんですが、「あっ、つながった」と思った瞬間は、とてもやりがいを感じます。

みのり動物病院>