健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

-市民[動物愛護推進員]と行政が協力して取り組む群馬県の事例より-

考えたい、人と動物が幸せに暮らすということ。

「私にも何かできることがある」そう思って動物愛護推進員に。


シャドーと保護犬から家族に迎えたメイ(右)

私の住む高崎市は緑や里山に囲まれています。空気もきれいで水も美味しく、動物と暮らすにはとてもいい環境です。駅周辺には犬・猫と一緒に暮らせるマンションも増え、都心と同じように室内で飼われる方が多いようですが、 私が住む地域では犬を番犬として庭に繋い でいるお宅や、自由に屋外を行き来する猫もまだ多く見かけます。 人と動物が幸せに暮らしていくために、何か私にもお手伝いすることができないかと思い、平成20年11月から始まった群馬県の動物愛護推進員委嘱制度に、一般公募で応募しました。

できることを長く続けていきたい。 動物が苦手な方への配慮も心掛けています。


地域の公園でウンチ袋を配布

推進員としての私の活動は (1)地域での活動 <飼育マナーの啓発、飼い主のいない猫の問題などの個別対応> (2)得意な分野での活動 <推進員になる前から関わっていた動物慰霊祭への参加> (3)その他の活動<研修会、動物愛護フェスティバル、動物慰霊祭への参加> 等です。長く続けられるように、家族の理解と協力を得て自分ができる範囲で活動すること、偏った活動にならないように地域の状況と問題をしっかり把握すること、また動物が好きな方だけでなく苦手な方の気持ちも十分に配慮して、動物に対する理解を深めていただくことを心掛けています。

一番の願いは、活動を通じて地域全体をよくしていくこと。


散歩によく利用する場所は、
定期的な清掃でいつもきれいに。

推進員になってから、間渕さんをはじめ県や保健所の担当者、専門家、推進員仲間の皆さんと連携して地域に根差した活動ができるようになりました。以前と比べて、活動の幅も私自身の意識もずいぶん広がったように思います。

行政担当者の皆さんからも、この推進員制度をより良い形で運営していこうという熱意を感じます。

私たち推進員の要望にもきちんと対応してくださいますし、地域の皆さんに推進員のことを知っていただけるようになって、活動しやすくなりました。いろいろな問題を解決していくためには、飼い主さんがマナーを守り、きちんと正しく飼育していただくこと、猫の飼い主さんには室内で飼うメリットをご理解いただくこと、不妊手術の必要性を引き続き根気強く伝えていくことが大切だと感じています。他の推進員の方や行政だけでなく、動物病院、動物愛護団体、そして飼い主の皆さんと一緒に力を合わせて、地域全体がいい方向に進んでいけるよう、犬や猫についての問題を解決していくことが、今の一番の願いです。

様々な立場の方の思いがひとつになれば、問題はきっと解決できると思います。


群馬県健康福祉部食品局衛星食品課
主幹 間渕 徹さん

群馬県では、平成20年3月に「群馬県動物愛護管理推進計画」を策案し、10年後の平成29年度までに「犬・猫の引取り数を50%減少させる」、「犬・猫の苦情件数を20%減少させる」、「犬の返還・譲渡率を30%にする」等の具体的な目標を掲げ様々な施策に取り組んでいます。

これらの目標達成と動物に関わる様々な問題を解決していくには、県や市町村をはじめ、獣医師会、動物愛護団体等の連携した対応はもちろん、皆さんの理解と協力が大切です。そのため、犬や猫の正しい飼育方法を皆さんに広くお伝えする人材が必要と考え、動物愛護推進員の委嘱を計画に加えました。

群馬県では平成20年11月に46名の推進員が誕生し、平成22年11月には再任・新任を含め54名に増え、動物愛護団体等に所属している方や獣医師、ドッグトレーナー、主婦の方など様々な立場からご協力をいただいています。将来的には100名程度までに増員し、動物関係機関と力を合わせ動物愛護の推進に取り組んでいきたいと考えています。

そして、動物と暮らす皆さんにお願いしたいこと。


啓発パンフレット

犬や猫の飼い主の皆さんには、適正な飼育をお願いします。基本的なことですが、飼い主の明示(犬には狂犬病予防法に基づく鑑札と注射済票の装着、犬・猫ともに迷子札やマイクロチップの装着等)。犬は放し飼いにしない。散歩時の排便は持ち帰る。猫は感染症や交通事故防止のためにも室内飼育する。犬・猫ともに生殖器系の病気や望まない繁殖防止のために不妊・去勢手術を受けさせる。この他にも、飼い主としてマナーをきちんと守っていただくことで、大きな改善が期待できます。

また、犬や猫をこれから家庭に迎えようと考えておられる方は、「かわいいから」、「流行っているから」と安易な理由で飼い始めたりせず、ご家族全員の同意を得られるか、最期まで責任を持って飼うことができるか、飼育に必要な費用、ご家族の環境や生活パターンなどをじっくり考えた上で判断してください。

「動物の愛護及び管理に関する法律」の基本原則には、すべての人が「動物は命あるもの」であることを認識し、みだりに動物を虐待することのないようにするのみでなく、人間と動物が共に生きていける社会を目指し、動物の習性をよく知ったうえで適正に取り扱うよう定めています。この基本原則は動物を飼っているかいないか、動物が好きか嫌いか等関係なく、社会に暮らす全ての方の義務であるということをぜひ心に留めていただきたいと思います。

【群馬県動物愛護推進員・諸星清美さん】
動物愛護推進員は、動物への理解と知識の普及のため、地域の身近な相談員として、適正飼養の推進、避妊去勢のアドバイス、飼い主のいない犬や猫の譲渡会などの支援、行政と連携し適正飼養の普及啓発など地域に根差した活動を行うことを役割とした都道府県知事等から委嘱される市民ボランティアです。「動物の愛護と管理に関する法律」38条に動物愛護推進員の役割が記されています。

今回は、動物愛護社会化推進協会(HAPP)が取組む、「人と動物・自然との調和のとれた社会づくり」の活動を通じて出会った地域の活動を紹介させていただきました。

ペピイは、人と家庭動物がより幸せに暮らす社会を作る活動を支援しています。