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必読!愛猫のワクチン講座

必読!ワクチン講座ワクチン接種は済んでますか?

災害時は感染症の流行が心配。万一に備えて、必ずワクチン接種を!

地震などの大規模な災害時には、人もペットも避難所生活を余儀なくされることがあります。今回の東日本大震災でも、多くのペットが避難所や救護センターに収容され、感染症の流行が心配されました。
ペットも集団生活をしていると、病気をうつしたりうつされたりの危険性が高まります。感染源に接触する機会が増えるだけでなく、いつもと違う生活から来るストレスや栄養状態の悪化などにより体の抵抗力が落ち、より感染しやすくなるからです。
室内飼育が主体の普段の生活では、感染ペットと接触する機会は少なくても、不特定多数のペットが集まる避難所や救護センターではそうもいきません。もしもの時に備えて、ワクチンは必ず摂取しておきましょう。

ワクチン接種で予防できる感染症

猫汎白血球減少症(猫伝染性腸炎)

【原因】猫のパルボウイルスが原因。感染力が強く、感染後急激に症状が出て、体力の弱い子猫など一日で死亡することもある恐ろしい病気です。
【感染経路】感染猫との接触、感染猫の便や尿、嘔吐物で汚染された物、またノミなどの外部寄生虫によっても拡散されます。
【症状】最初は食欲がなくなり、水も飲まずにうずくまった状態になります。白血球が極端に減少し、発熱、激しい嘔吐、時として血便や下痢が始まり脱水症状を引き起こします。

猫カリシウイルス感染症(FCV)

【原因】猫のカリシウイルスが原因で、猫のインフルエンザとも呼ばれています。
【感染経路】感染猫との直接接触のほか、クシャミの飛沫、手、衣服、食器などの媒介物によっても感染。
【症状】初期症状は、クシャミ、鼻水、咳、発熱など、鼻気管炎とよく似ています。さらに症状が進むと、舌や口の周辺に潰瘍ができます。2次感染が起きると、肺炎を併発して死亡することも。

猫白血病ウイルス感染症(FeLV)

【原因】オンコウイルス(レトロウイルスの一種)が原因。
【感染経路】ウイルスは感染猫の唾液や血液などに含まれ、猫どうしのケンカによる接触などで感染します。
【症状】白血病を引き起こしたり、免疫力が低下し、流産や腎臓病、リンパ腫など様々な病気の原因にも。とくに生後間もない子猫が感染すると発病しやすく死亡率も高いです。

猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)

【原因】猫のヘルペスウイルスが原因。
【感染経路】感染猫のクシャミや分泌物などからうつり、猫の「鼻カゼ」ともいわれています。
【症状】症状は、急な元気消失や食欲消失、発熱、鼻水、クシャミ、目ヤニなど。下痢から脱水症状を起こして衰弱が進み、死亡することも。

クラミジア感染症

【原因】猫のクラミジアが原因。
【感染経路】感染猫との接触で感染します。
【症状】主な症状は、粘着性の目ヤニを伴う慢性持続性の結膜炎。また、鼻汁やクシャミ、咳などが現れ、時に気管炎、肺炎などを併発し、重症化すると死亡することもあります。

ワクチン接種が普及していない&予防できない感染症

 次の二つは、感染しても必ずしも発症するわけではありませんが(感染の有無は血液検査で判明)、発症すれば致死率の高い感染症です。早期に発見し治療することで、よい状態を長く保てる場合もありますが、完治はしません。
 猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)は、現在、国内でもワクチン接種が可能になりましたが、まだ他のワクチンほど実績はなく、また猫伝染性腹膜炎(FIP)にはワクチンがありません。予防のためには、感染の恐れがある他の猫との接触を避け、室内での飼育が望まれます。

猫伝染性腹膜炎(FIP)

【原因】コロナウイルスが原因。猫に感染するコロナウイルスにはいくつかあり、猫伝染性腹膜炎を起こすものと腸炎を起こす腸炎性コロナウイルスがあります。
【感染経路】発病した猫の唾液、鼻水、便、尿から、直接または間接的に経口・経鼻感染しますが、感染力はあまり強くありません。
【症状】初期の症状には食欲消失や発熱が見られたりします。重傷になると腹水や胸水、黄疸の症状が出たり、他の臓器も侵され、様々な症状も発現します。

猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)

【原因】一般に猫エイズと呼ばれる病気ですが、人のエイズとはまったく異なる別の病気で、人や他の動物に感染することはありません。
【感染経路】感染は猫どうしの接触によるもので、ケンカなどでの咬み傷から感染する場合がほとんどです。
【症状】猫エイズウイルスに感染し、病気が発症し免疫不全を起こして初めて猫エイズとなります。感染しても発症してない猫は、無症状キャリアと呼んで区別しています。

ご質問をどうぞ!

Q.アナフィラキシーが怖いのでワクチン接種をためらっています…

A.確かに、ワクチンによる副作用の可能性はゼロではありません。接種部位の腫れや軽い発熱ぐらいなら、治療もいりませんが、ごくまれにアナフィラキシーと呼ばれる、重度のアレルギー反応が起きることがあり、呼吸困難に陥るなど生命に関わる症状を示します。
しかし、アナフィラキシーが起こる確率は極めて低く、それを恐れてワクチン接種をしないのは、賢明な選択とはいえません。感染症のリスクのほうがより大きいので、心配な場合は注射したあとすぐに帰らず、待合室で15分ぐらい様子を見てあげれば、万一の備えにもなります。

Q.猫エイズのワクチンがあるらしいと聞いたのですが?

A.日本でも2008年8月から接種可能になりました。初年度は2~3週間ごとに3回の接種が必要だったり、また接種前に感染の有無を調べる検査もうけなければなりません。
今までのワクチンと一緒に接種はできませんので、新しいワクチンプログラムが必要になります。まだ様子見している動物病院も多いので、まずはかかりつけの獣医師にご相談ください。

ワクチン接種によってつくられる免疫は一生続くものではありません。成猫になっても継続して受けるようにしましょう。