健康・しつけ・くらし記事 獣医師さんのアドバイス

春から夏の健康管理

季節は春、そして暑い夏へと移っていきます。
愛犬が元気で快適に乗りきれるよう、日々の健康管理で実践したいこと、気をつけたいことをアドバイス!

換毛期の乗り切りは、 毎日のブラッシングと掃除で。

春から夏にかけての換毛期は、犬種によって差はあるものの、よく毛が抜けます。抜け毛対策は、こまめなブラッシングと掃除しかありません。
ブラッシングは抜け毛や被毛の汚れを取り除くだけでなく、皮膚へのマッサージ効果もあり、血行を良くし新陳代謝を促します。またブラッシング時は、毛や皮膚の状態をチェックする機会。湿疹や脱毛、しこり、ノミやダニなどの寄生虫がいないかなどを確認しましょう。耳の中や尻尾の付け根など見逃されやすい場所も忘れずに。

狂犬病の予防注射は、 社会の一員としての責務です。

春は、狂犬病予防の集合注射のシーズンです。狂犬病の予防注射は、法律で定められた飼い主の義務。毎年1回、集合注射会場か動物病院で必ず受けてください。
狂犬病は、犬だけでなく猫やアライグマ、スカンク、コウモリなどすべてのほ乳類に感染する可能性があり、人間も狂犬病ウイルスを保有する動物に咬まれたり、引っかかれたりすることで感染する「人と動物の共通感染症」です。いったん発症すれば、致死率ほぼ100%の危険な病気です。日本でも2006年に男性2人がフィリピン滞在中に犬にかまれて感染し、帰国後、死亡した事例が報告されています。
アジア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカなど世界のほとんどの地域で現在も狂犬病が発生しており、世界保健機関(WHO)によると狂犬病による死亡者数は年間55,000人にのぼると推計されています。
万一、日本国内で狂犬病が再上陸した場合、犬が人へ狂犬病をうつす感染源となる可能性が一番高いと考えられます。狂犬病の予防接種は、単に愛犬を守るためではなく、非常に危険な伝染病のまん延を防ぐために、社会の一員として果たすべき責務なのです。

飼い犬登録は犬の「住民票」、 新たに犬を迎えたら必ず登録を。

生後91日齢以上の犬は、各自治体へ登録の申請をする義務があります。申請は市町村役場へ。また手続きを代行してくれる動物病院もあります。初回の登録を済ませておけば、翌年以降、改めて更新する必要はありません。ただし、飼い主の所在地変更や犬の死亡時には届け出が必要です。
今年新たに子犬を迎えた方、まだ登録を済ませていない飼い主さんは、愛犬の「登録」を忘れずに済ませておきましょう。

梅雨シーズンは、とくに 飼育環境の衛生管理をしっかりと。

ジメジメした梅雨は、カビや細菌、ダニなどが繁殖しやすい季節。天気の良い日を選んで犬小屋やベッド、お気に入りのマットなどの洗濯や虫干しをしましょう。また、普段使っている食器もこまめに洗い、首輪やリードなども清潔に。
犬との暮らしには、抜け毛やにおい、排泄物の後始末はつきもの。「しかたがないわ」とあきらめず、清潔で快適な環境づくりを工夫してください。

腐敗や酸化が進みやすい季節、 フードの保管、食べ残しに注意。

これからの時期は暑さも湿度も増していきます。缶詰なら一度開封したものはその都度使い切る、ドライフードも開封後は密閉容器に入れて日の当たらない涼しい場所に保管し、1カ月程度で使い切るなど、食べ物の保管・管理には十分気をつけてください。
食べ残しはすぐに片付け、食器を清潔に保つこと。水もこまめに替えて、いつも新鮮なものが飲めるようにしましょう。

「熱中症」に気をつけて!  車内や密室は危険です。

犬を乗せてドライブする時は、わずかな時間でも車内に置き去りにしないこと。エアコンを切った車内はあっという間に高温に達します。駐車時は必ず一緒に連れ出してください。
また、閉め切った室内も、車内同様、室温が上がります。犬だけでお留守番させる場合は、太陽光がまともに差し込まないようにカーテンやよしずを利用したり、エアコンをつけたままにするなどして、室温が上がり過ぎないように注意すること。またいつでも水が飲めるようにして出かけましょう。
万一、熱中症になってしまったら、まず水で体を冷やすこと。首や足の付け根の内側など、動脈を冷やすのが効果的です。そして十分な水分補給を。スポーツ飲料があればより有効です。

ノミやダニなどは、 人にうつって 被害を及ぼすことも!

この季節は、ノミやダニ・マダニなど犬や猫にとってやっかいな外部寄生虫の動きが活発になる時期です。寄生されるとかゆみの原因になるだけでなく、皮膚病を引き起こしたり、様々な病気を媒介することも。また人にうつって害を及ぼすこともあります。
毎日、スキンシップを兼ねて、毛が抜けたり赤くなっているところがないか、よくみてあげましょう。もしノミやダニの寄生が見られたら、安易に市販の薬品や駆除剤を使用せず、総合的な治療と駆除・予防について動物病院で相談してください。

犬フィラリア症の予防を万全に

フィラリア(犬糸状虫)は、犬の心臓や肺動脈に寄生(まれに猫も感染)する内部寄生虫。犬フィラリア症は、感染犬から直接他の犬にはうつらず、蚊が媒介します。感染すると、元気がなくなり食欲不振などがみられ、次第にせき、腹水(お腹がふくれる)、貧血・失神などの症状へと進み、放置すれば死に至る恐ろしい病気です。蚊取り線香や虫除けだけでなく、適切な予防が大切です。
犬フィラリア症の予防は、蚊の発生時期に合わせて行います。予防薬には、月に1回飲ませる錠剤やチュアブル剤(おやつタイプ)、スポット剤(首の後ろに薬を垂らす滴下式で、ノミの駆除・予防も一緒にできるものもあります)など、様々なタイプがあります。予防を始める前には、動物病院で血液検査を受け、感染の有無を調べてもらってください。
予防期間は、蚊が飛び始めて1カ月後(4~5月頃)から蚊が見られなくなって1カ月後まで(11月~12月頃)がめやす。地域差があるので、獣医師の指示に従い、適切な予防を行いましょう。

犬フィラリア症の感染経路