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犬・猫のデンタルケア「丈夫で健康な歯を」

犬・猫のデンタルケア丈夫で健康な歯を

歯の内部構造

口の中(歯や、歯肉、舌、など)に発生する様々な病気を総称して、「口腔内疾患(こうくうないしっかん)」とよんでいます。

あなたの愛犬や愛猫に顔を近づけた時、口臭が気になったことはありませんか?また、お腹が空いているはずなのにフードを食べにくそうにしていたり、口の中が痛そうにしていることはありませんか?「そういえば・・・」と思い当たるようなことがあれば、この「口腔内疾患」とよばれる口の中の病気が進行しているのかもしれません。

今回は口腔内疾患のなかでも一番身近な、犬と猫の歯の健康管理についてお話をしましょう。

■歯垢と歯石

歯垢
口腔内の食べ物のかすや剥離した上皮細胞、および糖タンパク、細菌などが、液状物に変化し、歯の表面等に付着するものが歯垢です。
歯石
犬や猫の口腔内は人とは異なりphがアルカリ性で歯垢がつきやすい環境です。歯垢の蓄積量が増加すると歯の表面が糖タンパクや、リン酸カルシウムなどにより細菌沈着が容易になり、歯垢から石灰化して歯石が形成されます。表面が不均等(凸凹)のため、さらなる歯垢沈着が起こり炎症を引き起こします。
 歯石がつくと土台である歯槽骨が吸収され、歯が剥き出しになり、やがて抜けてしまいます。このような状態の時に、歯石は細菌の巣となっています。

■歯周病とは?

歯周病は、歯肉炎、歯周炎などの総称です。初期は歯を支えている歯肉に炎症を起こし歯根部の欠損や歯と歯茎の間の溝が異常に深くなってしまいます。原因の多くは細菌感染によるもので、歯間部などに歯垢が溜まる事によって発症します。

歯周病の口腔では嫌気性細菌が増殖し、その結果、歯肉構造の破壊が起こります。やがて歯根膜、歯槽骨、セメント質などの歯周組織が破壊されてしまい、歯が抜けてしまうこともあります。重症になると、細菌が歯の組織、歯槽骨を溶かしてしまい、膿が皮膚を破って目の下などから排出されたりすることもあります。

歯に歯垢が付着すると、そこに酸素の供給が少なくなり、好気性菌(空気を好む菌)が死滅し嫌気性菌(空気を嫌う菌、歯茎の奥へ奥へと進みます)が増殖します。そして嫌気性菌によって炎症や細菌毒素による組織・全身にダメージを与えます。

歯周病は、大型犬に比べると小型犬(プードル、ヨーキー、ポメラニアン、チワワ、短頭種など)に多くみられます。

犬の口腔内の細菌比率

歯周病による不快な症状
  • 持続的な口臭
  • 慢性歯肉炎や歯周炎
     (自然に治らないもの)
  • 歯のゆるみ
  • 口の周囲の痛みや知覚過敏
  • 食べたり噛んだりするのが困難、食欲不振など

■歯周病の予防

歯垢や歯石が歯周病の初期原因です。飼い主ができる歯垢を除去する方法には、歯磨き・歯のブラッシングがあります。歯磨きがどうしても無理な場合は、無理に歯磨きはしないで、歯垢の付着しにくいフードや、歯垢を取り除く効果のあるデンタルガムなどを与えるようにしましょう。

歯に付着した歯石をきれいに取り除くためには、動物病院で歯垢・歯石を削り取るスケーリングやルートプレーニング、ポリッシングといった処置が必要になります。スケーリングはスケーラーと呼ばれる器具を使い全身麻酔下で行われます(麻酔以外は、私達が歯医者さんでしてもらう「歯石取り」と同じ要領です)。 重度な歯周病の場合は外科的な処置(抜歯など)を行うこともあります。スケーリングなどの処置については、かかりつけの動物病院でご相談ください。

歯を健康に保つには、犬でも猫でも幼い頃からの健康管理が大切です。永久歯が生える前に、歯磨きに慣れさせる、口の中を触っても平気でいられるように慣れさせておくことは、犬の場合も猫の場合も大切です。

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動物病院で扱っているデンタル製品

歯の本数は、犬の場合は大型犬も小型犬も同じで、乳歯は28本、永久歯は42本です。猫の場合は、乳歯が26本、永久歯が30本です。二重に歯がはえたり、乳歯が抜けずにそのまま残っていたら獣医師に相談してください。

加齢や病気によって口の中や歯が衰えてしまわないように、歯磨きや、時々口の中をのぞいてみてあげるなどして、口の中の健康管理も行いましょう。