極楽いぬ生活

ココちゃん、手術を受ける

 先日、ココアは生まれて初めて手術を受けた。3年ほど前から耳の後ろにあったしこりが急に大きくなったので、取ってもらうことにしたのだ。泣くイヌも黙るやんちゃワンのココアのこと、そんな簡単な手術くらいどうってことない、なーんて思ってもらっちゃ困る。こう見えて彼女は、生まれてこの方お預かりお泊まり一切無しのちょー過保護ワンなのだ!初めて預けられるのが病院で、しかもひとりで手術を受けるなんて、これほどの一大事があるだろうか。

  手術当日、私とココアは決死の覚悟で病院を訪れた。が、迎えてくれた看護師さんは淡々と「預かります。」とだけ言い、ココアを連れて行こうとした。
 ちょっと待って。そう簡単に預ける訳にはいかないの!クーの手術のときのように鎮静剤が効くまで側についていたいと告げると、今度は先生が笑いながらこう言った。「大丈夫ですよ。しばらく待合室で待っていてください。」
 診察室から看護師さんたちの声が漏れ聞こえてくる。「ココちゃん、どうしたのかな〜?」「ココちゃん、おりこうね〜。」
 そんなワケない。どうもしないし、おりこうでもないだろう。やさしい声のもとでは、全身脱力作戦で抵抗するココアと、立たせようとする看護師さんたちとの間で、地味なバトルが繰り広げられているに違いないのだ。
 しばらくするとまた先生が出てきてこう言った。
「大丈夫です!」
 何をもってそう断言するのかは不明だったが、私自身も不安を感じないし、これ以上食い下がって『この飼い主にしてこのイヌあり』と思われる勇気も根性もなかったので、そのままココアを預け、家に帰った。

 1時間ほど経ったころ、病院から電話がかかってきた。早すぎる。鎮静剤が覚めるのに3〜4時間かかるから、お迎えはそのころにという話だったのに。何かあったのかとドキドキしながら受話器を取ると、何のことはない、手術が無事終わったので迎えに来るようにとのことだった。

 病院の扉を開けると、元気なココアが駆け出してきた。短いしっぽをお尻ごと超高速でプルプル振っている。初めてのお預かりで心細かったのだろう。先生は眉をハの字にしながらこう言った。「普通なら鎮静剤が効いてぐたーっと眠っている時間なんですけどね。このコは気力で立ってます!」だから、家で休ませた方がよいと判断し、電話をくれたのだそうだ。

 さすがはココア、いつも私が「このコが運動選手だったらな。」と思うだけのことはある。体力、運動能力もさることながら、メンタルもトップアスリート並みに強いのだ。脚を少々傷めてたって、いったんボールを追い始めれば、必ず絶好調時の走りを見せる。あらゆるマイナス要素を精神力でカバーできるヤツなのだ。しかし、気力で薬に勝てるのか?アスリートである前に、生き物なのに。

 家に着いて、ココアを車から降ろしたちょうどそのとき、目の前を散歩中のワンとおばさんが横切った。バウバウバウバウバウッ。ついさっきまで『手術台の上で呼気麻酔』だったイヌが、吠える吠える。エリザベスカラーをつけ、耳の後ろにはハゲと縫目。本来ならば涙目で気の毒がられてもよいところを、おばさんに思いっきり睨まれ、こっちが涙目だった。トップアスリートも善し悪しだ。

 1週間後、しこりの検査結果が出た。汗腺が詰まって嚢胞ができちゃってたらしい。何とも脂性なココアらしい結果ではあった。

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プロフィール

マルヤマ ユーコ
イラストレーター
うらんとココアとクリオの姉(自称)
クリオ(愛称クー)
エアデール・テリア
オス♂ 4歳
愛されるために生まれてきた、わが家の末っ子長男。3歳をすぎても相変わらずのお日さま犬ぶり。性格のよさはピカイチ。
ココア
スタンダード・シュナウザー
メス♀ 6歳
何事につけても白黒はっきり、0か100かの極道の妻、いや、犬。3年半を過ぎて、ようやく少し落ち着きを見せはじめた。ただし、家の中限定。実はものすごい頭がいい。でも、使い方を間違うの〜。
うらん
ゴールデンレトリバー
メス♀
2006年1月、お星様になる。やさしくて大らかでちょっとシャイだけど、かなり強気なわが家の長女

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