極楽いぬ生活

その後のふたり

戌年が明けてすぐ、わが家の長女のうらんはお星様になった。そのことについてはまたいずれ書くとして、今回はその後のココアとクーのことを書こうと思う。

 うらんがいなくなった直後、ココアとクーはやっぱり様子が変だった。遊ばない、はしゃがない、覇気がない。イヌに悲しいという感情があるのかどうかはわからないし、仮にあったとしても「今、自分は悲しんでいる」と自覚はしていないだろう。でも、ふたりは確かに落ち込んでいた。自己主張しまくりのふたりに押され、いつも一歩引き気味なうらんだったけれど、やっぱりわが家のワンズのボスだったのだ。
 後ろでどーんと構え、たいがいのことは受け入れてくれ、めったなことでは怒らない。そんなボスがいなくなって、残されたふたりはとても小さく心細げに見えた。また、うらんはふたりを繋ぐかすがいでもあった。ココアはいつもうらんのお尻を枕にして寝ていたし、クーがじゃれる相手も、唯一マウンティングをする相手も、うらんだった。うらんを欠いたふたりの間には微妙にひろ〜い間があった。
 こんな、ニンゲン、イヌともに落ち込んだ静かな日が1週間ほど続いただろうか。やがてふたりは少しずつ元気を取り戻し始めた。と、今度はクーが妙にギラギラし始めた。もともとわが家のワンズの番付は、年の順に1位うらん、2位ココア、3位クリオとなっていた。その「1位うらん」がいなくなり、ごく自然にココアが前に出た・・・ように見えた。少なくとも私たちニンゲンとココアには。
 しかし、クーにはそうは見えなかった。彼にはうらんがいなくなって、うらんの「席が空いている」ように見えた。そして、思った。「なんとか1位のあの席へ!目指すは2階級特進だぁ!」
 かくしてクーの戦いは始まった。それまで静かな悲しみに包まれていたわが家は、一気にドタバタに包まれた。クーはことあるごとにココアに絡んだ。まるでヤンキーの兄ちゃんのようにガンを飛ばしたと言っては絡み、肩があたったと言っては絡む、そんな感じだった。
 普段は激しい遊びが大好きなココアも、辟易するほどの絡みようだった。しかし、いくら絡んでも芯の強さでは勝ることなく、2週間ほど経った頃には、どう決着がついたのかわからないが、ヤンキークーはいつものニコニコクーに戻った。2階級特進の野望は野望のままに終わった。
 それから徐々にふたりは仲好しになっていった。追いかけ合ったり、じゃれあったりするようになった。それにつれて、ふたりの間にあった微妙にひろ〜い距離も縮まっていった。ソファーの端と端とで寝ていたのが、少しずつ近づき、ついには伸びをすれば足が触れるほどの距離で寝るようになった。ま、足が触る度に「もうっ、触らんといてよ。人が寝てんのにっ。がうっ。」と言わずにはいられないココアではあるけれど。

 今、ふたりは隣り合って寝ている。ほとんどくっつきそうなのに、くっつきたいのに、くっつかないように気をつけながら。この分ならクーがココアのお尻に頭を乗せて寝る日も遠くはなさそうだ。
 うらんが逝って3ヵ月、イヌが2匹であることにようやく慣れつつあるわが家だった。


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プロフィール

マルヤマ ユーコ
イラストレーター
うらんとココアとクリオの姉(自称)
クリオ(愛称クー)
エアデール・テリア
オス♂ 4歳
愛されるために生まれてきた、わが家の末っ子長男。3歳をすぎても相変わらずのお日さま犬ぶり。性格のよさはピカイチ。
ココア
スタンダード・シュナウザー
メス♀ 6歳
何事につけても白黒はっきり、0か100かの極道の妻、いや、犬。3年半を過ぎて、ようやく少し落ち着きを見せはじめた。ただし、家の中限定。実はものすごい頭がいい。でも、使い方を間違うの〜。
うらん
ゴールデンレトリバー
メス♀
2006年1月、お星様になる。やさしくて大らかでちょっとシャイだけど、かなり強気なわが家の長女

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