極楽いぬ生活

おっとり長女うらん、ご乱心?

 6年間、ひとりっこで育ったうらんは、はっきり言って愛されすぎだった。自分でも愛しすぎと自覚したことがある。もちろん、私たちも理性あるオトナだったので、そういう自分を押さえはした。マットの上ですやすや眠る子イヌのうらんを、みんなで取り巻き、ただ眺めた。触らずに。でも、成犬になってくると、そういう視線すらも”かまっている”ことになる。イヌはこちらの視線を感じている。うらんはいつもやさしくそれを受け入れていたが、本当のところ腹一杯って部分もあったろう。たまには放っておいてくれよな〜、って。
 だから、ココアがやってきて、みんなの関心と愛情と労力が分散されたとき、うらんはちっともヤキモチを妬かなかった。かまわれない時間があることは、うらんにとってはホッとすることだったのかもしれない。ま、そのかわり、ココアから向けられる関心とチェックと言いがかりがすごかったんだけど。主張の強い、小さいココアが加わったことで、うらんは何でも後回しになった。要求もしないし、がまんできるし、しかも、すねないから。遊ぶのも後、シャンプーも後、お庭に出るのも後。たまにお散歩やゴハンまで後回しにされることもあったが、それでもうらんは、争いなく、穏やかに静かに過ごせれば、それが一番と思っているようだった。

 ココアはご存知の通りのやんちゃ者で、私たちは本当に手を焼き、振り回された。ヒトの話もイヌの話も聞かず、とにかく走り回り、逃げ回る子イヌだった。耐えに耐えて(もちろんニンゲンが)2年が過ぎようというころ、ようやく”かわいいうちのコ”になりかけていた。そんなところにクーが来て、ココアはキレた。よいコになるのはやめにした。ライバル出現。しかも、幼くてかわいいときたもんだ。出る杭は打たねばならぬ。かくして、クーに対して厳しい教育的指導を加えつつ、自分のかわいらしさもアピールしつつ、目的は達成しなければならないし主張は通さねばならない。前へ前へ。アタシ、アタシ。ココアの忙しい日々が始まった。


 一方のクー。歳の離れたオネーチャンと歳の違わぬうるさいオネーチャンに囲まれて、末っ子長男の彼はとにかく笑っていた。もともとの気立ての良さもあるが、これは彼の世渡り術でもあると思う。ニコニコニコニコ。笑ってすべてをかわし、笑ってすべてを思い通りにした。順位にうるさいココアは、新入りのクーにプレッシャーをかけ、何度もひっくり返した。でも、クーはニコニコ。そしてココアの気がちょっとでもそれると、すぐにニコニコ起き上がり、ガミガミココアの不意をついてニコニコペロッ。これではココアも受け入れずにはいられない。怒られてもニコニコ、唸られてもニコニコ、うれしくてもニコニコ。しかーし、決してあきらめない! 必ず目的は達成するのだった。

 うらんは初めての大型犬だったので、私たちのしつけも厳しかった。キッチンに入ることは禁止されていた。いけないと言われれば入りたくなるものだ。隙を見て入ろうとするのだが、そのたびに「出なさいっ!」と叱られる。しかし、クーはニコニコしながら何気な〜く入ってきて、黙ってニコニコ座っている。ふと振り返ったオカーサンと目が合う。「あらぁクーちゃん、そこにいたの〜。笑ってるの〜。どうしたの〜?なんかほしいの?」 そして、なんかいいもんもらえたりする。

 世の中、笑っていれば大概のことはうまくいくって本当なんだぁ、と、クーを見ていて学ぶ。また、主張が強い、うるさい者に対しては、人は折れるものなんだなぁ、と、ココアを見ていて学ぶ。やっぱり、必要なときには前に出なければと。主張しないうらんは今も何でも後回しだ。下の2頭が先を争ってうるさいので、どうしてもそちらが優先になる。黙っていちゃ損をする、と、うらんを見ていて学ぶ。

 ところが、当のうらんもそう思ったのだろうか。最近主張をするようになった。前に出ようとするようになった。ワタシもワタシも、撫でて撫でて、連れてって連れてって、ちょうだいちょうだいって。ココアと2頭のときは、黙っていても関心と労力の3分の1くらいはまわってきた。でも、3頭になったら、ガウガウココアとニコニコクーに手を取られ、うらんに払われる関心と労力は10分の1くらいになった。主張しなければ何も手に入らないと気づいたのだろうか。積極的に甘え、要求し、誘うようになった。しかし、慣れない者が急にそんなことをするもんで、どうもうまくいかなくていけない。家族には「どーしたん?うらん?ボケたんか?」といぶかしがられ、ココアからは厳しいチェックを受ける。「アンタ、何ゆーてんのよ〜!」って。クーは言わずと知れたニコニコマウンティング攻撃だ。それでも、うらんはがんばっている。前へ前へ。ワタシワタシ。ニコニコニコ。必要はイヌを変えるのだ。ヒトももちろん変えるだろう。イヌから学ぶことは多い。

 
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プロフィール

マルヤマ ユーコ
イラストレーター
うらんとココアとクリオの姉(自称)
クリオ(愛称クー)
エアデール・テリア
オス♂ 4歳
愛されるために生まれてきた、わが家の末っ子長男。3歳をすぎても相変わらずのお日さま犬ぶり。性格のよさはピカイチ。
ココア
スタンダード・シュナウザー
メス♀ 6歳
何事につけても白黒はっきり、0か100かの極道の妻、いや、犬。3年半を過ぎて、ようやく少し落ち着きを見せはじめた。ただし、家の中限定。実はものすごい頭がいい。でも、使い方を間違うの〜。
うらん
ゴールデンレトリバー
メス♀
2006年1月、お星様になる。やさしくて大らかでちょっとシャイだけど、かなり強気なわが家の長女

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