ペット用品通販 ペピイ > コラム・エッセイ> セントラルパークは今日も晴れ その7●ボクたちを一人ぼっちにしないで!

<大沢>民間で運営されているASPCAのような施設があるなんて、やっぱり日本とずいぶん違うのですね。
<山下>そうですね。個人だけでなく社会全体の犬に対する意識がずいぶん違います。今回も、ここNYならではの驚かされる出来事がありましたので紹介しましょう。
僕が、家庭犬訓練の勉強をさせて頂いている、ASPCAのベテラントレーナー、バーバリーより、セパレーション・アングザイティのトレーニング治療をしてみないかとの依頼がありました。セパレーション・アングザイティ、日本では「分離不安」と訳されているのでしょうか、簡単に言うと「お留守番トレーニング」ですね。
日本でもこう言った依頼はたくさんあるのですが、僕がその依頼宅へと地図を頼りに出かけて行くと、そこにいたのはASPCAからアダプト(里親)で迎えた、シェパードとラブラドールのミックス犬でした。生後6ヶ月のまだまだ幼さの残るやんちゃ盛りのワンちゃんです。オーナーさんの話を聞くと『連れて帰ってきた当時から、ひとりにして出かけると、扉をガリガリ掻いてワンワン吠え、ついにアパートの向かいの方から苦情が…』という事でした。
そういう事は日本でも良くある事ですよね。でもここからが随分と違います。その苦情の言葉というのが『まだまだ子犬なのに、そんな子をひとりにしておいてどうするの?子犬のうちはもっと一緒にいてあげないといけないでしょ!』とこうなのです。日本の場合であれば、『向いの犬がやかましい、静かにさせろ!』と恐らくなるでしょうね。ここが日本とNYの犬に対する考え方の根本的な違いなんだなと発見しました。
マンションでの吠え声に関する苦情では次のような例もあったそうです。老犬になって犬の痴呆が始まり一日中吠えるワンちゃんに対して、同じ階の方が『最近すごく犬が吠えているので、もしや虐待しているのではないの?一度調べてほしい!』とASPCA所属のアニマルポリスに通報されたそうです。当然ASPCAのアニマルポリスがすぐに対応し、飼い主さんが事情を説明して事なきを得たようです。
もしあなたの隣の家やマンションの隣の部屋で赤ちゃんや子供が毎日泣き続けていたら、あなたはどうしますか?もしや幼児虐待?なんて思ったりしませんか?
日本では最近ようやく幼児虐待ホットラインなどの体制が整い、母親や家族からの幼児に対する虐待が認知され始めました。幼児虐待に対してはNYでは、ベビーシッターの定着もあり、日本よりも早くから認識、問題視されてきました。その事が現在のNYでは、人の子供だけではなく、犬に対しても定着しているのです。
つまり、NYの犬事情を理解するには、犬は人間の赤ちゃんや子供と同じであると理解すれば間違いないでしょう。犬も赤ちゃんも子供も、一日中泣き続けていたら通報されてしまうことはニューヨークでは当然の事なのです。
この事に関してもう一つ面白いエピソードがあります。
僕がマンハッタン、アッパーイーストの公園で犬の訓練をしている時の事です。ある程度訓練も進み、その日は「指導手が犬のそばから姿を隠し、再び戻って来るまで待つ」という訓練を集中的にやっていました。
犬に「待て」の号令をかけ、オーナーさんと一緒にぐるりと住宅街の一角を回って帰って来た時のことです。犬の周りにたくさんの人が集まっているではないですか。何かあったのかと慌てて犬の元に駆け寄ってみると、「この犬は君の犬か?みんなで心配していたのだよ。もう少しでアニマルポリスに通報するつもりだったのだ」という事なのです。
事情を説明してわかって貰えたのですが、次の日からオーナーさんが作ってくれた『只今STAYトレーニング中!』という看板を犬の横に立て掛けるようにしました。
この例から、犬も人間の赤ちゃんや子供同様だという考えが浸透していることがよくわかります。実際NYでは12歳以下の子供が一人で出かける事はまずありませんし、法的にも12歳以下の一人での外出は禁止されています。当然犬が単独でいるという事もNYでは異常事態という事だったのです。犬も子供も社会的弱者! 社会的弱者はみんなで保護する、その徹底がNYで犬が家庭の一員と言われている所以なのでしょうね。
私自身、このエピソードを聞けたり体験できたりしたことはすばらしい経験になりました。
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